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本当の姿
8P
しおりを挟む俺は不器用だからな、上手く言葉にして伝えることができねぇ。どうすればいい?何て言葉をかければこの想いは伝わる?
工事をして、戸籍上の性別を変えてしまったら。その瞬間にこいつはただの俺の理想の女になってしまう。
俺が好きなマリアンは消えてなくなってしまう。それではだめなんだ。マリアンは今が1番生き生きと輝いていて、マリアンらしい。だからそこに惹かれるんだ。
「今のままがいいって、シャオリンにも言われた。本当に今の、男とも女ともつかないようなアタシでいてもいいの……?」
ずっと沈黙を決め込んでいたマリアンがやっと顔を上げ、目が合った。
真紅の瞳が、その奥にある心がゆらめいている。不安で不安で仕方がないってか?お前が好きな俺がずっと好きだの惚れているだの惹かれるだの言ってんだ、さっさと受け入れろ。
「自分のことをアタシって言うの、無理してるだろ。そのナリでオレって言えばどうなるかわかっているから、女らしくしてんだろ?マリアンのなりたいように、自分に素直になってみろよ」
そう言うと、また顔をうつむかせた。俺がここまで言ってやってんだ、まだ完璧な女になりたいとか言うんじゃねぇぞ。
けど、今まで信じて努力してきたものをもういいんだって拒否されると戸惑うよな。
歳の差は犯罪級で、10年前の俺はどんなにこいつに惹かれていても手を出してはいけない、叶わぬ夢だと割り切っていた。
だがこいつは違った。ずっと俺のことを好きでいてくれて、俺がぼやいた理想の女にならなければと人生の全てを捧げてきた。
俺のためにここまでしてくれるなんてな、俺は幸せ者だ。だめだ、嬉しくてにやけてくる。
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