警察の犬は雨天がお好き

那月

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番犬

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 ――ある雨の日。俺は朝からデスクワークでミナギは家で待機中。電話が鳴った。押し殺された声で「帰宅の待ち伏せ狙い。プロの殺し屋。玄関」と言われ、緊張が走る。


 ミナギによれば、雇われたのであろうプロの殺し屋が家に侵入。俺が帰宅したところを襲おうと家の中をうろついているようだ。


 電話に出てから俺の様子が変わったことに、今日もまた留守番の腰抜けの同僚が気づいたが。「トイレだ」と軽く手を上げて席を立つ。


 身内かもしれない。電話の直後にトイレなんてあからさますぎるか。だがそんなの、気にしていられない。トイレに行くフリをしてそのまま家に向かう。


 いくらミナギが警察犬のように果敢に犯人に食らいつく戦闘の得意な犬でも。家の中では傘を思うように振るえない。銃声も、近所に気付かれたら色々とヤバい。


 ミナギが肌身離さず持っているあの黒い傘。あれは改造武器。スイッチ1つで剣にも盾にも銃にもなる。作ったのは前の飼い主らしいが。構造は教えてもらっても全く理解できなかった。


 人間離れした高い身体能力を持ち、武器を手に犯人に立ち向かう姿は、まるで物語の勇者。


 だがあいつは人間だ。19歳の、子供を卒業しようとしている男の子。生まれが特殊だっただけで、他は同い年の男の子と何ら変わらない。俺はそう思っている。


 彼自身が認めてないだけだ。「僕は普通じゃない」なんて、ふざけやがって。


 車を飛ばす。ミナギが「僕がやる」なんて言うから。通話を切って、電源も切って。切れる寸前に「必ず守るから」なんて。


 死ぬ気だ。あの子は自分の死をいとわない。刺し違えてでも、犯人を殺そうとしている。それくらい強いプロの殺し屋。


 頼む、生きていてくれ!願いながら、警鐘を鳴らし続ける胸を押さえ家に飛び込む。


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