ユキ・シオン

那月

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檻の中から見える景色

11P

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 あんなことをしておいて、勝手な奴だっていうのは重々わかっている。けどな、俺は、ユキ・シオンを愛することをやめられないんだ。


「シオン……」


 あれだ、愛情の裏返しってやつ。違うか?とにかく、緋桜が言っていたように俺は左手の薬指を元に戻そうと思う。


 左手を掲げれば、そこには何もない。外した。愛するシオンとおそろいの、幸せの証を俺は外していたんだ。


 外せば、考え直せば何かが変わると思っていたのかもしれない。結果、俺はやっぱりシオンを愛しているってことを再確認。


 俺の左手を見た時の緋桜、ものすっごい怒っていたんだと思う。口調は穏やかで、顔も無表情だったが。あれはあれで、ものすっごい怒っていた。


 香さんも口には出さなかったがきっと気付いていただろうし。何も言わない代わりに、あんなになるまで俺を元に戻そうとしてくれた。


 皆が俺達を気にかけてくれる。擬人化種の仲間だから。それ以上に、俺とシオンのつながりは特別だと皆も認めてくれているから。


 大学からそのまま来たからずっと羽織りっぱなしだった白衣の、ポケットに手を突っ込む。


 外しても、それは俺が大金をはたいて手に入れた大切なもの。大事なシオンとの思い出。永遠を誓い合った証、絆の証。ハンカチに包んで入れていた。


 手を引き抜き、ハンカチを広げる。


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