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檻の中から見える景色
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しおりを挟むあんなことをしておいて、勝手な奴だっていうのは重々わかっている。けどな、俺は、ユキ・シオンを愛することをやめられないんだ。
「シオン……」
あれだ、愛情の裏返しってやつ。違うか?とにかく、緋桜が言っていたように俺は左手の薬指を元に戻そうと思う。
左手を掲げれば、そこには何もない。外した。愛するシオンとおそろいの、幸せの証を俺は外していたんだ。
外せば、考え直せば何かが変わると思っていたのかもしれない。結果、俺はやっぱりシオンを愛しているってことを再確認。
俺の左手を見た時の緋桜、ものすっごい怒っていたんだと思う。口調は穏やかで、顔も無表情だったが。あれはあれで、ものすっごい怒っていた。
香さんも口には出さなかったがきっと気付いていただろうし。何も言わない代わりに、あんなになるまで俺を元に戻そうとしてくれた。
皆が俺達を気にかけてくれる。擬人化種の仲間だから。それ以上に、俺とシオンのつながりは特別だと皆も認めてくれているから。
大学からそのまま来たからずっと羽織りっぱなしだった白衣の、ポケットに手を突っ込む。
外しても、それは俺が大金をはたいて手に入れた大切なもの。大事なシオンとの思い出。永遠を誓い合った証、絆の証。ハンカチに包んで入れていた。
手を引き抜き、ハンカチを広げる。
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