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ナツメと安倍晴明
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しおりを挟む「――ナツメは晴明様のことを愛してるんだね。ナツメの心を癒すことができるのは、満たすことができるのは晴明様だけなんだね」
辛い夢から覚めたら気だるいうえに体が重い、息苦しいほどに。それもそうよね。だってあたし、涙を流しながらマクベスにきつく抱きしめられているんだもの。
ベッドに仰向けになっているあたしを、覆いかぶさるように抱きしめているマクベス。
倒れたあたしを運んで寝かせてくれたんでしょうけど、どさくさに紛れて何してんのよ。それが素直な感想ね。あと、苦しい。暑い。恥ずかしい。それから、怖い。
「は、早くどきなさ――」
「俺、本気だから。ナツメの全てが好きだ、愛している。ナツメが晴明様を愛しているのならそれでいいよ。嫌われたくはないけれど、ナツメにとって晴明様を想うことが幸せならそれでいい。だから、勝手に片思いでいることを許して。俺はもう、何も隠したくないんだ」
腕を突っ張って、密着していた体を無理やり離して思い切りビンタしてやったわ。パァンッ!って乾いた音が部屋に響いて、でも彼は顔に笑みを浮かべた。
あたしの目をまっすぐ見つめて手を伸ばし、指であたしの涙を拭うとベッドから降りる。背を向ける。
「…………ごめん。やっぱり許してくれなくてもいいよ。おやすみ」
そのまま、マクベスはあたしが口を開く間もなく足を踏み出して部屋を出ていった。おやすみって、もう夜なの?
怖かった。襲われると思って混乱して、思わず手が出た。ビリビリする。震える。
なんかもう、色んな事がありすぎて頭の中がグチャグチャよ。マクベスに告白されてキスされちゃうし、夢では晴明様に逢っちゃうし。
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