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動いた山は氷山の一角に過ぎない
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しおりを挟むユエさんお得意の「お金頂戴」のポーズ。アキラさんに叩かれた手を「痛いなー」と撫でながら静かに呟いた彼女は、いつもと違っていた。
急に真顔になって背筋を伸ばし、口調もふざけたしゃべり方じゃなくて真面目。クール。でもまたいつもの彼女に戻ったわ。
怪しくニヤッと笑ってみせた彼女は、逃げるように去って行った。
ユエさんが見つけて運んできた少年ってもしかして、もしかしなくてもラファルガ君よね!?右腕がないですって!!?
あたし達は走った。医務室に向けて全力で走った。途中でアキラさんのケータイが鳴って、相手はカレスだったけど用件は知ってるから「向かっている!」とだけ叫んで切ったわ。
先頭を走るアキラさんが医務室の扉を勢いよく開け放ったのと、あたし達を迎えに来ていたカレスが吹っ飛んだのは同時。
カレス、アキラさんが開けたドアにブン殴られちゃったみたい。床を転がって伸びていたけど、すぐに自力で起き上がったわ。
「うぅっぐぅぅ……す、すみません、治療に集中してて報告が遅くなりました。ラファルガ君は、こっちです……」
そう言って涙目でアキラさんを見るカレスの目は「ドアを壊す気ですか!って言っても聞いてくれませんよね!」とでも言いたげに怒っていたわ。
とんでもない勢いで吹っ飛んだのに、自分のことよりドアを心配するのがある意味カレスらしいわよね。
もちろん、アキラさんは気づいていない。それどころじゃない彼はカレスに案内され、ファルガ君が手術を受けている部屋の前でウロウロ。
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