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動いた山は氷山の一角に過ぎない
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しおりを挟むあたし達に「もう少しかかりますから、どうか待っていてください」と言い残して手術室に入って行ったカレスも、羽織っている白衣がラファルガ君の血で真っ赤に染まっていたわ。
右腕……きっと小童子にやられたんでしょうね。普通なら大量失血で倒れているわ。それでなくても、子供なんだから泣きわめいて自我を失うくらいのはずなのに。本当に自力で脱出するなんて。
強いなんてものじゃないわ。ラファルガ君の中にも、誰にも譲れない何かがあるのよ。
年齢なんて関係ない。彼には彼の確かな目的、決意があって鬼死団に入団し鬼と戦っている。命がけで。
ラファルガ君はね、孤児なの。両親は鬼死団の団員だったんだけど、7年前の百鬼夜行で戦死した。だからといって彼が両親の後を継ぐ必要はない。
でもあえて辛い道を選ぶのは復讐のためだけじゃない。それはあって当然なの。彼はきっと、自分の意思でこの道を選んだ。
「ねぇ、ナツメ、ちょっと……」
あーもう、こんなにも落ち着きのないアキラさんなんて見てらんないわ。と声をかけようとした時、マクベスがあたしの腕を引いた。
さっきの話ね。手術室に乱入するようなことはしないはずだし、アキラさんはそっとしておきましょ。
あたしとマクベスはさりげなく離れ、誰にも聞かれないようにヒソヒソ話す。別に聞かれても大丈夫だと思うんだけど、なんとなくね。
「もしかして、マクベスも夢で逢ってるの?あたしと同じなの?」
「わかった?俺のここに、彼がいるのが。好きなのに、ずっと気づかなかったんだな?」
マクベスはあたしの右手をつかむと自分の胸にあてた。ドクンッドクンッと、力強いマクベスの鼓動。目を閉じて意識を集中させると、かすかに彼の存在を感じる。
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