恋人以上、永遠の主人

那月

文字の大きさ
上 下
116 / 268
動いた山は氷山の一角に過ぎない

9P

しおりを挟む

 そう、だったんだ。マクベスに言われないと気づけなかっただなんて、彼に笑われちゃう。


 本当の“永久の鬼追いマクベス”は、あたしと同じだったのよ。マクベスも呪を受けた時、彼の魂の欠片をその身に取り込んだ。


 マクベスの心の中には、晴明様の魂の欠片がある。


 1人の人間の魂をいくつかに分けて他の人に与えるなんて、いくら晴明様でも有り得なさすぎる御業だわ。しかもそれで晴明様の力が使えるようになるんだから神様レベルよ。


 もう、あたしの中の晴明様が「クスクス」笑っている気がするわ。まいっちゃう。ますます好きになっちゃうじゃない。


「晴明様……」


「…………鬼の残骸で記憶を読み取るのとは違って、俺の術“悟裏”は全くコントロールできなかった。触れるたびに悟ってしまうことが怖かった」


 知らなくていい、知りたくない時に悟ってしまう。知りたい時には悟れない。数百年はそうだった。


 悟る度に直接頭の中に流れ込む情報の洪水に酔い、頭痛と吐き気に襲われる。それでも、強靭的な精神力で我慢してあたしに気付かれないようにしていた。


 知られれば、あたしが気を使ってマクベスに触れるのをためらってしまうから。戦闘の時は仕方がないけれど、プライベートで触れられないのは彼にとって苦痛。


 能力自体は大変便利なものだから、早くコントロールできるようになって打ち明けられるように練習し続けた。


 どんな時に悟り、どんな時に悟らないのかをひたすら調べて条件を探した。莫大な時が流れ襲いかかる情報の波にも慣れて酔わなくなった頃、ようやく“悟裏”のコントロールに成功。


 いつものようにあたしを“充電”しながら眠っている時に勝手に流れ込んできた情報を、止めることができた。


しおりを挟む

処理中です...