恋人以上、永遠の主人

那月

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迫りくる氷山

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 先に逃げた子供達は先導してくれる人がいないのですぐに見つかってとらえられるか、その場で殺される。それはわかっている。


 重要なのは、どんなに低くて望みが薄くても逃げ切れることに賭けること。そして、ラファルガ君が脱出して鬼死団本部に帰ること。


「初めて声をかけてくれた友達だった。同い年なのに体が小さいのを気にして、よくおいらを上から押し潰して頭を肘掛にした。大好きな親友だった。なのに……」


 檻の中が小童子達、友達と年長少年とラファルガ君だけになった時。友達は魔法で自分とラファルガ君の体を入れ替えた。年長少年は、友達の姿、小さくなったラファルガ君の腕を引いて穴へ押し込む。


 ラファルガ君の姿になった友達が2人を背に庇い体のあちこちの肉を食われている間、ラファルガ君は涙を流しながら這った。


 体をひねってようやく、ギリギリ通れる大きさの穴を少しずつ進み、通り抜けきる直前に右腕を少年小童子に食いちぎられた。


 口元まで出かかった悲鳴を噛み殺し、穴から出てラファルガ君が立ち上がり振り返ろうとした瞬間、2人の声。


 力強い「「走れ、振り返るなっ!!」」の声はラファルガ君の背中を押し、言葉の通り最後まで振り返らずに走った。


 背中で聞いた2人の絶叫と、直後に元の姿に戻ったことで2人がどうなってしまったのかを悟った。それでも、胸が張り裂けそうになっても歯を食いしばり走り続けた。


「見つからずに脱出できましたが、ビルを出てからしばらく走って心身ともに力尽きてしまいました。ユエさんに見つけてもらえなければ今頃、小童子の栄養になっていたと思います」


「「「…………」」」


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