恋人以上、永遠の主人

那月

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潜入は慎重に

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 じっくり動きを観察して見極める時間なんてない。ここは、作戦通りにいくわよ。


 3人で目を合わせ、うなずき合って同時に飛び出す。廊下の1か所に固まっている子供達5人に向けてグングン走っていき、マクベスは跳んだ。


 ポケットに手を入れて大きく跳躍し、子供達の上を舞う。子供達は全員、頭上のマクベスに気を取られて顔を上へ、自然と口がポカン。


「ごめんね」


 小さく唱えられた謝罪の言葉と同時に、マクベスはポケットから手を出して握っているものを子供達に投げつけた。


 謝罪の言葉と、力まずにバラまくように緩く投げたのは彼の優しさ。もしも彼らが小童子じゃなくて誘拐された子供だったらって、力加減をしたのよ。


 結果。マクベスの優しさは全然必要なかったわ。


「ギィィエェェァァアアアアァァァァッ!!」


「うっわ!?」


 口の中でそれを受け止めた子供達はブサイクな絶叫。顔がみるみる歪んでいき、可愛くなくなった子供達の額から小さな突起が生えてきた。


 小さくてもそれは立派な角、鬼の証。5人の子供達は全員、5体の小童子。


 小童子達の絶叫が至近距離のマクベスの耳をつんざき、あまりの不協和音に飛びかかってきた小童子に手の中の残りを投げつけちゃった。


 で、何を投げているのかって?豆、強いて言えば乾燥した硬い大豆よ。ほら、節分で「鬼は外」ってやるでしょ?鬼は本当に豆が大の苦手なのよ。


 だから、鬼死団はいつも一握りくらいは携帯しているの。今回は小童子と誘拐された子供とを区別するためだから、袋にいっぱい持っているわ。


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