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ハーメルンのホラ吹き
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しおりを挟む低い声は静かなのに、凄みで空気どころか地が震えるほど。必死で抑えているけど、湧き上がる感情が爆発してドラゴン化してしまいそう。
はるか昔、酒呑童子は約束したの。自分の最期をどうするか決めた。どうせ死んで地獄に行くのなら長年戦ってきた宿敵の晴明様と共にと。
わざわざ言いに来たのよ。突然の申し出に晴明様は笑っていたわ。そして首を縦に振って、地獄に堕ちたくなったらまた訪れるようにと。
あっさりしていたわ。酒呑童子がなぜ急に自分の死について考えたのか、晴明様を道連れに選んだのかは今でもわからないけど。
その時に酒呑童子は晴明様ではなく、マクベスと約束を交わしたの。
真剣な顔で「晴明の呪を受け共に地獄に堕ちる。もしも違えることがあればその時は、俺様を殺せ」と。そう言って彼は姿を消したの。
でも数日後の夜に終わらせる決意を胸に姿を現した。晴明様と酒呑童子で本気の、全力を出し合って戦い、想いをぶつけ合って。そして約束通り晴明様は彼に呪を施し、御身に酒吞童子の魂を封じた。
何があってもそばにいると酒吞童子に誓っていた茨木童子もまた、同じように終わらせたわ。
切ないけれど、美しい最期だった。見届けたのに。やっと親しみが芽生えた酒吞童子を手にかけないで済んだと思っていたのに、マクベスは焦っている。
あの時、酒呑童子も茨木童子も体は焼いて処分したはず。なのに今目の前で立っているのは本物の2人の体であり、本物の2人の魂が宿っている。
「悪いな、マクベス。俺様達もそのつもりだった、ちゃんと最期を迎えたんだぜ?でもな、叩き起こされちまったんだ」
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