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ハーメルンのホラ吹き
14P
しおりを挟むチュンッ!
「エ?…………ア、イタイ……?イタイ。ウッ……イタイ、イタイヨゥ!!ウワァァアアアァァァァァン!!」
引きちぎった腕にかぶりついた小童子のお腹を、1発の弾丸が通り過ぎた。引き金を引いたティンさんはそのまま、気を失ってしまった。
とっさにマクベスが受け止めたけど、顔が真っ青。無理もないわ。こんなホラーな展開、誰が予想できるっていうのよ。
酒吞童子と茨木童子だって青ざめて口さえ動かせずにいるわ。無意識とはいえ、こんな状況で照準を合わせて引き金を引いたティンさんはすごいわ。
なんて感心している場合じゃないわ。この小童子、普通の小童子じゃない。お腹を撃ち抜かれているのに倒れない。
転んで大泣きする子供のように泣きわめき、本能なのか手に持っている母親の腕に再び食らいついたの。そしてグチャグチャとおぞましい音を立てて食べていく。
それだけじゃないわ。傷口が、少しずつ塞がっていっているのよ。小童子は普通、傷が治ってもここまで早く傷口が塞がることはない。
特別な小童子。この数分の間に若干、体が大きくなってない?あたしの気のせい?恐怖と混乱で目がおかしくなっちゃった?
「お前の子供だァ、酒呑童子ィ。無事に元気に生まれて良かったなァ?」
ショックから立ち直れていないあたし達以外の声が聞こえた。誰かが、壊れたドアの横に立っている。藍色の長い髪の、黒いお面を付けた――
「「逃げろッ!!」」
見えたのはそこまで。だって、振り返った瞬間に茨木童子に突き飛ばされちゃったんだもの、窓の外に。
マクベスも、腕の中に気を失ったティンさんを抱えたまま酒吞童子に突き飛ばされて、一緒にビルの7階から自由落下。
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