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ハーメルンのホラ吹き
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しおりを挟む酒吞童子と茨木童子の姿がどんどん小さくなっていく。いくら永遠の鬼追いであるあたし達でも、こんな高さから落ちたら死んじゃうわよ。
でもあたし達、敵である彼らに助けられたのね。さっき見えた黒いキツネ面の男。あの人がミチカさんの記憶の中に出てきた男だわ。
酒吞童子と茨木童子が恐れる男。人間なのか鬼なのかはわからない。わかったのはウザい男だってことだけ。
少ししかいられなかったけど、鬼気は感じられなかった。だったら人間だっていうの?あの2人が恐れるのが、ただの人間?
新たにわかったことはいくつかあるけれど、同時に謎も増えた。それ以上に、受け止めがたいショックなことが起こりすぎて何が何だか。
とにかく今あたしが考えなきゃいけないのは。この絶賛自由落下中、もうすぐ地面に激突して死んでしまう結末を回避する手段よ!
片腕でティンさんを抱え込み、もう片方の手で離れないようにあたしの手を握っているマクベス。こんな時に役に立つ魔法が使えたらいいのに。
なんて後悔したって無理なものは無理。ビルの壁に足を付けて摩擦で何とかしようとしているけど、無理でしょ!落ちるスピードはほぼ変わらない。
グングン迫ってくる硬いコンクリート。まだ、今回は死ぬわけにはいかないのよ。
睨み付けてもどうしようもないけど、近づく地面を睨んでしまう。ってあれ?誰かが走ってきた。こっちに向かって両手を突き上げている?
「包み込め、ウィンディベール……ッ!」
あたし達の体が、フワリと暖かい風に包み込まれて優しくゆっくりと、地面に降りていく。
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