恋人以上、永遠の主人

那月

文字の大きさ
上 下
186 / 268
開戦再び

6P

しおりを挟む

「2度も3度も、もう許さねぇ。おいアキラ、こいつ、2時間ばかし借りるぞ。チッ…………こんな時に」


 ミケさんのことを「ミケオさん」と呼ぶ恐れ知らずなバカはこの世界でただ1人、お兄ちゃんだけ。


 さすがは師匠。風をギュッと固めて形成した巨大な風のグーパンチを2発、お兄ちゃんにかましたわ。


 ガシャンッ!とけたたましい音を立てて背中をフェンスに打ちつけたお兄ちゃんの胸ぐらをつかんだミケさんはさらに、今度は素手のグーパンチを1発。


 完全に男よ。勇ましい暴力男。アキラさんの様子を見る限り、慣れているってことはこの2人のやり取りはいつものことのようね。


 本性がこっちって、本当にわからない人だわ、ミケオプスさんって。


 怪しくも不思議な雰囲気がキリッと引き締まったものに変わり、歩き方や仕草は女性らしかったのに荒っぽくなって男らしい。


 口調は元々女性っぽくはなかったけど、野郎口調とギンッと鋭い紫色の目が格好良くも恐ろしさを感じる。


 気絶寸前のお兄ちゃんから視線を外したミケさんは何かを感じ取ったのか不機嫌そうに、舌打ちを打って遠くを見つめる。


 つられてあたしもその方向に目を向けて、息が詰まった。例のあのビルが、膨らませた紙袋を叩き潰したみたいにぺしゃんこになったの。


 ビルを潰したのは、ビルを足の下に踏みつけてどっこいしょと背中を伸ばしたのは――戦鬼。


 見間違うはずがない。7年前の百鬼夜行であたしとマクベスを殺し、当時の鬼死団団長や多くの死傷者を出した最大の鬼。


 身の丈ほどもある超巨大な金棒を振り上げ、振り下ろす。一瞬耳が聞こえなくなるほどの爆音が轟き、地面はパックリ大きな口を開け金棒が触れた建物は跡形もない。


しおりを挟む

処理中です...