恋人以上、永遠の主人

那月

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白銀の闇

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 あたり一面、まばゆいくらいの白銀の世界。って言っても雪景色ってわけじゃない。何の音も聞こえない、外とは完全に隔離された空間。


 ここがどこか、あたしならわかるわ。あんたがそこにいるの、ちゃんと感じるから。


 あたしはひたすら歩く。この先にいるあんたの背中を蹴りに行くの。隠れたって無駄よ、すぐにわかるんだから。


 そこにあるのかわからない白銀の地面を踏み歩き、あたしに蹴られたがってる小さな背中を見つけた。


 だから思いっきり蹴ってあげたわ。走り込んで、寸前に大きくジャンプして跳び蹴り。おかげで彼は驚きの混じったうめき声をあげて、前方4回転くらい転がった。


「痛い?生きている証拠よ。あんたはまだ生きているの。そう簡単に…………そう簡単に諦めたわけじゃないのはわかってる。でもね、皆が必死で助けてくれようとしてる、その努力を無駄にしないで」


「………………ここにいたらナツメまで穢れてしまうよ」


「今さらよ。何年あんたと一緒にいると思ってんの?あんたが抱える闇で穢れるって言うんなら、あたしはすでに同じくらいドップリ穢れているはずでしょ」


 見えない床に這いつくばってチラッと振り返るのは、泣きそうなほど悲しそうな金色の瞳で見つめるマクベス。


 ここは、ドラゴンに変身して折れてしまったマクベスの心の中。これでも、彼が超長年抱えて育ててしまった闇の中なの。


 闇だからって黒い暗闇だって限らないでしょ。マクベスの場合は白銀の闇なの。


 マクベスらしいっちゃあらしい。それにしても、情けない姿ね。この白銀の世界と、無駄に派手すぎる服さえジメジメジトジトになりそうなくらい、マクベスは陰の気を吐き出している。


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