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羅刹とカレス
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しおりを挟むもしかしたら彼本人にもわからないのかもしれない。悪の塊になってしまって、悪役の定番、世界征服とか世界滅亡に行きついちゃったのかもしれない。
「その目で、ワタシを見るなァ…………今のワタシが本物の羅刹、悪鬼羅刹なんだァ……」
「それは違う。俺とあなたが1つになって元に戻った本当のあなたが、羅刹なんです。良心が欠けたあなたは悪鬼羅刹、羅刹ではない」
「悪鬼羅刹こそが本物――」
「俺もあなたも、離れ離れになってそれぞれ新しい生き物に生まれ変わった。俺はカレスという名と暮らし、あなたは悪鬼羅刹という世界の破壊者に。あなたのような者が生まれ、1度世界が滅ぼされるのも世界のシステムなのかもしれない。それでも、俺はこの世界を守りたい。あなたにこの世界を壊させたくない、あなたを守りたいんです。俺はあなたの一部、良心なんですから」
似てる。羅刹とカレスは、マクベスとあたしによく似ているの。
お互いがお互いに必要不可欠。けれどそれぞれが“個”として存在できている。1つになるべき2つの存在。
違うのは、羅刹とカレスは世界の平和のために1つの元の存在に戻らなければならないということ。そしてあたし達は、1つになれば強くなるということ。
よく似ているけれど全く違う。まぁ、そんなものよね。結局は全て、元のあるべき姿に戻す。
羅刹とカレスにせよ、酒吞童子と茨木童子にせよ、この世界にせよ。全部元に戻って平和になったら、あたし達も終。消えてなくなる。
めでたしめでたし。この世界に未練がないわけじゃないわ。ただ、あたし達はあまりにも長い長い時間を生き過ぎた。だからもういいの。
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