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羅刹とカレス
6P
しおりを挟むマクベスがどう思っているのかは知らないわ。平和になった世界でまた、あたしと一緒に生きたいって思っているのかもしれない。
知らないわよ。マクベスとの暮らしはこの長すぎる人生でも飽きないくらい楽しいものだけど、晴明様を愛しているあたしとしては地獄でもそばにいたいの。
晴明様は全てが終わったら酒呑童子達を連れて地獄巡りを再開。体が消えても、魂まで消えてしまっても、強い想いだけでもそばに居させてほしいから。
…………なんて、終わらせてみないとわからないんだけどね。
このままカレスが羅刹の両目として戻っても、羅刹が元の良心を持った本当の羅刹に戻るかどうかはわからないんだから。
「ねぇ羅刹。俺と一緒にこの世界を旅しましょうよ。あなたが知らないこと、俺はたくさん知っているんですよ。だから代わりに、俺が知らないこの世界のことを教えてください。ギブアンドテイク、です」
「…………人間は醜い。この世界の穢れ。排除しなければこの大地は、海は、空は滅びる。ワタシが好きだったこの世界が人間達に壊されるくらいなら、全てをワタシが壊す」
顔を背けたまま、羅刹の頬を涙が伝い落ちていった。唇を噛みしめ、わずかに震えている彼は当時のことを思い出しているのかもしれない。
イギリスで両目を失ったあの日。人間達が己達の欲望のために起こした醜い戦争に巻き込まれ、ドラゴン化したマクベスに両目が引っかかったことで再生できずそれぞれの存在になった。
しかもドラゴンが生まれた原因は、記憶を取り戻したカレスによれば深い負の感情の蓄積による堕落らしい。
羅刹はずっと人間を恨み憎んできた。だから滅ぼそうとした。大好きなこの世界のため、それが最善だと思ったから。
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