惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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不幸は幸運

7P

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「明日は学校へ行くんだろう?俺もそれなりに近くにはいるようにするが、さすがに学校内には入れない。入りたくない。その代わりに、キツネを潜入させる」


 小娘が眠っている間に話し合っていたことだ。キツネはこれでも妖孤だからな。“化かす”力で一定時間、相手の記憶を改ざんすることができる。


 キツネには小娘の親戚の“孤吉”として神那と同じクラスに、元からいた設定として潜入してもらう。


 見た目の年齢的にも違和感はない。ただ、こいつの中身は小学校低学年レベルだ。人間の学校で人間として授業を受けるという夢がかなって、はしゃぎすぎなければいいが。


 まぁ、大人しく落ち着いていけと言っても無理だな。1分、いや3秒ともたないだろう。せめて、はしゃぎすぎてその怪力をいかんなく発揮して器物破損はするなよ?


 面倒くさい。そうなれば俺は放置してやるけどな。当たり前だ、自己責任という言葉はこのためにある。


「僕、学校に通って勉強して友達をたくさん作るのが夢じゃったんじゃ。あと5日じゃし、友達たくさんはできないかもじゃが、すっごく楽しみじゃ!」


「1日でもキツネ君……孤吉君なら友達くらいすぐにできるわよ。でも残念ね。正確には学校はあと4日しか行けないのよ。だって最終日、日曜日なんだもの」


「なぁっ!?じゃ、じゃあその前の土曜日も学校は休みなんじゃろ?4日しか行けないのに、つまり土曜日も神那ちゃんは行くんじゃな?」


「あたしは美術部よ。コンクールに出す作品を描きに行くの。それと、その口調は気を付けた方がいいわ。とっても変よ」


「そうだな。今の時代、その見た目で語尾に“じゃ”なんてつけるのはお前くらいだ。ジジイ呼ばわりされるぞ。虐めるには最高の標的だしな」


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