惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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人間の住処

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「小娘、ずっとここにいたのか。受験勉強はしなくていいのか?」


「試験自体は先週終わって、3日前――あんたの所に行く前日に合格通知をもらったわ。だからあとは卒業だけ。それにしてもあんた、別人とまではいわないけど綺麗になったわね」


 ついさっきまで寝癖だらけでボサボサだったとは思えない俺の、グレーの長髪に手を伸ばす小娘。その細い手を、睨みつけた。


「俺に触れていい人間は限られる。お前は、まだ駄目だ。だが……綺麗なのは気分がいい。風呂を貸してもらった礼だ、少しなら許す」


「そ、そう、お気に召したようでよかったわ。じゃあ……わぁ、すごいスベスベっ。こんなに綺麗なのに汚いまま放置されてたなんて可愛そうだわ」


「…………お前、手の平に爪を立てて眠らないようにしていたのか?唇も切れている。相当眠いんだろう」


「やっこれは、足がつっちゃって。ま、丸1日も寝ちゃってたんだし、眠たくなんて……」


 俺の髪に触れている手とは逆の手の平に小さな三日月形の赤い痕が見えた。指摘をすればバッ!と背中に隠す、明らかな怪しさ。


 目を反らす小娘に顔を近づけてみれば下唇に血が滲んでいるし、よく見ると目が赤い。


 この短時間で悪夢にうなされてできた傷か。おおよそ、家族を失った時の悪夢だろうが、5日の不眠がたった1日で回復できるはずがない。


 目が合って、顔から耳、首までを真っ赤に染めた神那はバッ!と俺から離れた。手を隠し笑って誤魔化しているが、バレバレだぞ。


 しかしこの時の俺はわかっていなかった。赤い三日月の痕が睡魔との葛藤だけではなく、もう1つの苦しみを我慢してできたものだったとは。


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