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人間の住処
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しおりを挟む自分はいつ死ぬのか。明日、明後日?1週間後?1月後?来年?それとも、もうすぐ?どこで、どうやって死ぬ?
死んだらどうなる?家族の墓はあっても自分の葬式をしてくれる家族はもういない、遺体や遺骨を処理してくれる人もいない。孤独に終わる。
そんなことを真剣に考えてしまう子なのだ。小娘はすでに、自分が近いうちに死ぬことを覚悟している。覚悟したうえで、俺を訪ねた。
机の隅に「周りに迷惑をかけない死に方、準備」というタイトルの本が置いてあった。ジジイババアが読むような本を、こいつは熟読している。
だが、この先の未来を諦めているわけでもないようだ。なぜなら、机の上や3段ボックスの中に美術の本がたくさんある。
いつどこでどんな美術展覧会が開かれるのか、作品募集についてもカレンダーに細かく書き込まれている。
さらに目を動かせば。年相応のファッション雑誌が数冊、それから文庫が数冊。あとは、美術で使うのであろう使い方もわからなければ見たこともない道具が数えきれないほど。
小娘がどれほど美術が、絵をかくのが好きなのかがよくわかる部屋だ。けどな。3段ボックスの上に飾ってある観葉植物が枯れているぞ。
ハッキリわかる。陰ながら努力をする子だ。俺は努力はしないが、一生懸命に努力するやつは嫌いではない。応援しているぞ。
「1週間なんて、もっと欲張って1年とか言えばよかったものを。まぁ、お前が選んだことだ、今更変更はせぬ。だから明日もしっかり生きろ、生意気な小娘」
1年間も守ってくれなんて言われていれば断っていたがな。
外に蹴り出して、ヤモリに家を隠してもらう。それでも、諦めが悪い小娘ならあるいは、見えなくなってもドアをバンバン叩いて、蹴って、声が枯れるまで叫ぶのだろう。
俺は小娘の年相応な寝顔を見つめ、音もなく手を伸ばし、その小さく丸い頭に手を滑らせた。
「おやすみ、神那……」
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