惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

文字の大きさ
64 / 218
人間の住処

14P

しおりを挟む

 離れるつもりはないが、なにぶん動きづらい。髪が長いのがいけなかったか。腰よりも長いからな、切るのが面倒だっただけだが。


 カーテンの隙間から差し込む月明かりを眺め、仕方がないと溜め息を吐き、そして目を閉じた。


 まったく、キツネが俺だったら慌てふためいて泣いているぞ。そしてこの状況を見て、俺に新しい名前が付けられたと知ったら笑うんだろうな。


 俺のことをよく知っているキツネなら、俺に蒼輝なんてシャレた名前が不似合だと腹を抱えて笑うだろう。もちろん、笑った瞬間にブン殴るけどな。


 あいつは今頃、客間で寝ているんだろうか。小娘が寝ていた布団でぬくぬくと、熟睡か。


 これは小娘が眠っている間に聞いたことだが、キツネは元々空き家だったこの家に住んでいて、あとから小娘が引っ越してきたため屋根裏に移ったらしい。


 つまり、元々の住人は仮住まいといえどキツネだったわけだ。それからずっと小娘を見てきたのだから、この家と小娘に愛着が湧いている。


 妙なことだが。同じ家に住む者同士、キツネはキツネで、小娘を守ってやりたいという強い想いがあるのだろう。


 その小娘はきっと、とても不安で恐怖している。自分から頼み込んだ、本物の鬼の俺でも、本当に卒業まで自分を守ってくれるのか自信がない。


 心の底から、真に頼れる人がいないから寂しい。そんなそぶりは一切見せないよう、わざと明るく振る舞っている。


 逆に、俺が本物の鬼だから。俺が、小娘に襲いかかるかもしれないという恐怖もある。鬼と名のつくものは昔から、悪いものとされているのだから。


 馬鹿な小娘だ。この世に生まれてまだ、たったの18年しか生きていないというのに、死への恐怖が尋常ではない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

処理中です...