惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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気配

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 後悔はしていないがな。なにせキツネは凶暴な方の人格をたまに使わないと、勝手に出てきて暴走行為をしてしまう。


 それも、主に俺に襲いかかってくるのだからな。俺に何の恨みがあるのか、ぐっすり寝ている所をいきなり殴りかかられては迷惑この上ない。


 容赦なく、ボッコボコに来るぞ。だから俺も、まぁ多少は手加減をしてやりながらも殺さない程度に灸をすえて元の人格に戻してやるんだが。


 凶暴な方になっている間、キツネに記憶はない。目が覚めると全身ボロボロ、激痛のオンパレードというわけだ。


 二重人格とはいってもキツネの精神は1つ。新種のオネェがその時の気分で男になったり女になったりするような、スイッチみたいなものだ。


 どっちが本来のキツネなのかは俺にもわからない。ただ、昔、何年もとても嫌な思いをして悟りを開いたらこうなったと言っていた。


 一体何があったのやら。気が向いて深く聞いてみようとしても、話をそらされるか逃げられる。もしかしたら、あのうるさいガキのキツネの方が後から生まれた人格なのかもしれないな。


 俺の膝の上で静かな寝息を立てて眠るキツネの頭を、そっと撫でた。


「おやすみ、キツネ」



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