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不和歌麿呂
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しおりを挟む「――長らくお待たせしました。こちらにどうぞ」
昼休みに入った歌磨呂が柔らかい笑みを浮かべ、店の外に出た。そのままどんどん歩いていき、やがて店の裏にある森の奥で足を止めた。
「この森にはあまり人は近づきません。込み入った話をするには最適です」
森の奥に拓けた場所がある。そこには広い広い、こともないがそこそこ広い湖が広がっていた。
歌磨呂はそこで俺達の方を振り向き、悲しそうに微笑む。両手を広げ「どうぞ」と言う。何だ?
「私はあの日のこと、鬼さんのことは誰にも話していません。と言っても、私の記憶を消すのでしょう?それとも、私を殺しますか?」
「っ、そんなこと!命を粗末にしないでください。確かに俺はこいつに頼まれて、あんたの記憶を消すように言われましたがさっきキャンセルになりました」
「あれ、鬼さんじゃなくて君が?って……え、キャンセルですか……?」
死を恐れる少女の次は死にたがりか。さぁ殺してくださいと言わんばかりに広げていた両腕を下ろし、首をかしげる。
俺は先に説明した俺には式札を扱うことはできても、記憶を消すことはできない。できるのは、陰陽師の末裔である和比呂だと。
すかさず和比呂が「おい、いきなりバラすなよ!」と吠えたが、俺が「大丈夫だ。こいつはあの時のことを誰にも言っておらぬし、これからも絶対に言わぬ」と目を向ければ口を閉ざした。
俺が微塵も動じなかった、諭すような静かな声に、空気を読んでくれたか?
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