212 / 218
永遠の鬼ごっこ
8P
しおりを挟む「昔に『千年を過ぎたら1発ブン殴るから』って言っただろう?千年、長すぎる。待ちくたびれた」
「痛ってーなーもう。地獄で罪を償っていたんだ、って言ったら信じてくれるか?ハハハッ、悪かったな。そんなむくれるなよ?」
今の酒呑童子を殴るのはちょっとだけ、気が引けた。なにせあの歌磨呂の顔。綺麗な顔を腫らすなんて。いや、でもこいつは酒吞童子だ。
手加減したとはいえ渾身の1発だからな、そりゃあ痛いだろう。殴られた頬をさすっていた手を伸ばし、酒呑童子は俺の頭を優しく撫でた。
あぁ、この感じ。他の誰に頭を撫でられるのとも違う、体は違っても酒呑童子の手の平の感じ。懐かしい、嬉しくてつい、顔がほころぶ。
大きくなっただけではなく、筋肉が程よくついて引き締まった体に、顔を隠すように抱き着いてみた。それも勢いよく。
本物だ。酒呑童子がここにいる、触れている。確かに感じる彼の魂。酒吞童子がここにいると示す感覚全てに喜んで、嬉しすぎてもう泣きそう。おちょくられるから泣かないがな。
「おふっ。よしよし、お前は犬みたいだな」
「俺は鬼だ。お前も鬼だ」
「またそんなことを言う。ハハハッ、あんたは昔から変わらねぇなぁ。変わらなさ過ぎて、安心したぜ」
笑っても、次の瞬間には柔らかく優しい声に俺は目を閉じた。俺も、安心した。あんたが全然変わってないから。
抱きしめる腕に力を込めて息を吸い込めば、酒呑童子も抱きしめ返してくれる。俺の匂いを吸い込み「懐かしい匂いだ」と首元をクンクン。
「寂しい思いをさせて悪かったな。これからは、ずっと一緒にいよう、時久」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる