能ある鬼は角を隠す

那月

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見られているということ

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「買い物。逃げるための口実だったとはいえ、手ぶらで帰ったらだめだよなぁ。でも、手持ちもあんまりないしなぁ……」


 あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。街の大きな通りを避けるように歩いている敦彦の頭には、角がないのを隠すようにほっかむり。


 家の近くにいる時はともかく、にぎやかな街に出かける時は必ず頭を隠している。けれどこれが、真っ赤で逆に目立ってしまっているので。


 買い物に行った証拠に何か買おうと大通りに出る勇気が出るわけもない敦彦。渋々、町から離れた山のふもとにある小さな店へと向かった。


 大きく迂回して、遠回り。町に着いてすぐ、誰かにあとをつけられている感じがするのだ。


 距離があってよく見えないが、山に山菜取りに来た男のような装い。山笠をかぶり、背中には大きなカゴを背負っている。


 だが、完全に敦彦の後ろにいる。山菜を探しているように周りをキョロキョロしているが、どうにも怪しい。


 敦彦のことを知っている者が、敦彦を本気で人間だと思って殺しに来たか?そういうことは、よくあるのだ。


 だから敦彦は冷静に対処できる。自分の身を守ることくらいは、できる。店に行くのをやめて道を変えて、歩き続ける。歩いて歩いて、姿を消す。


 山の中、大きな岩場の向こうへと足を踏み入れた時だった。岩場の向こうから、敦彦は出てこない。


 怪しい男は慌てた。敦彦が突然消えたから。それだけではない。姿を消した大きな岩場へと走ると、そこにいたのは――


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