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見られているということ
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しおりを挟む腰の刀を、鞘ごと抜いて2本の小太刀を受け止め横に滑らせるように流しながら起き上がる。前のめりになった相手に両手で持った鞘に収まったままの刀を振り下ろした。
けれど、空振り。たしかに体勢を崩していたのに、相手は前に跳びかわすとさらに大きく跳ぶ。
敦彦は青ざめた。2つの理由で。1つは、文字通り跳んできた格好いい鬼の琴音が、左の二の腕を怪我している。
ほんのわずか、着物が切れて血がにじむ程度。けれど、それでもあの双子を怒り大爆発させるには十分だ。今すぐ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れと、狂ったように呟き願う。
だがそれよりも。やっとちゃんと見えた、突然敦彦を襲撃した相手の姿に呼吸が止まる。
「お前、は…………クロキツネ」
「そんなまさか!貧しい鬼にお金や食料、薬を恵んでくれたり、鬼を人間から守るためにどこからともなく現れて人間を退治してくれる風来の義賊。クロキツネがどうしてここに!?」
なおも前に出ようとする、鬼剥き出しの琴音を下がらせ目の前の人物に困惑する敦彦。
2人が言うように、目の前にいるのは「クロキツネ」と呼ばれる鬼。名前の由来となった黒い狐の面をかぶっている。
素肌が見えないほどに、頭から黒い布を被り動きやすさを追究してか全てが黒の忍装束姿。そして黒い狐の面の向こう、頭の上にはこれまた真っ黒い角が3本。真ん中の角は短い。
どこで習得したのか、軽業師のような軟体の身のこなしと体術。目で追えないほどの素早さと2本の小太刀を武器とし、けれど素性は誰も知らない。
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