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見られているということ
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しおりを挟むこんな近くでじっくりクロキツネの姿を見ることなんてない。なんて考えられるわけもない。敦彦はもちろん、三童子の血を引く琴音でさえ太刀打ちできない。
逃げるのも、素早さに長けるクロキツネ相手では背を向けたが最後。
どうする?町から山を越えてかなり離れたこんなところ、あの店に来る客以外には滅多に来ない。討伐部隊が見回りにでも足を伸ばさない限り、2人は助かるすべがない。
あとは、クロキツネが諦めて撤退するかだが。依然として、クロキツネは敦彦をまっすぐ見つめたままピクリとも動かない。
「…………ない。僕は……違う、人間じゃない」
「駿河さん?」
スッと、クロキツネが2本の小太刀を構え身を低くした。敦彦は目を伏せ、ボソリと呟く。腰に差し直した型なの柄を握り、1歩踏み出した。
「どんなに言っても信じてくれない。もううんざりだ。だから、僕がちゃんと鬼だって証明する。琴音ちゃん、お願いがあるんだ。目を閉じて耳を塞いで、何があっても僕が肩を叩くまでそのままでいて」
敦彦の雰囲気が変わった。声が変わった。スラリ、長い刀身を引き抜いて両手で柄を握ると鋭く光る切っ先をクロキツネに向ける。
闘志が、敦彦の体からにじみ出る強い闘志が琴音の紅い瞳にハッキリ見えた。
顔は見えない。なのに、怖いくらいに落ち着いている今の敦彦なら、クロキツネと互角に立ち合えると感じる。いつもの弱々しい、川で呪詛を吐くような敦彦ではない。
琴音はその場にしゃがんだ。両目をギュッと閉じて、両手で両耳を塞ぐ。歯を食いしばり、肩に触れる温もりを待つ。体が勝手に動いた。
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