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見られているということ
18P
しおりを挟む「難儀よねぇ、敦彦君も和紗ちゃんも。前鬼神様が、和紗ちゃんのご両親がご存命なら、こんなことにはならなかったでしょうに。一体誰が前鬼神様を――」
「華南様。なんだか疲れてしまったので、僕は帰りますね。何度も助けてくださり、ありがとうございました。あぁ、帰ったら和紗に色々言われそうです」
敦彦は華南に背を向けた。帰らないと。きっと和紗が心配している。自分の感情任せな発言のせいで、敦彦を酷く傷つけてしまったと。
それに、琴音の店の方からドギツイ視線を感じるのだ。きっと、あの双子のだな。ことが落ち着いたからと店に行こうものなら、再び双子に捕まりもれなくハチの巣にされる。
逃げた。振り向いて深々と頭を下げてからニコッと微笑んで、華南が口を開く前に歩き出す。
「……とぉーっても遠いから、道中気をつけてねぇ。今度は大きなクマが出るかもしれないから。クスクスッ」
やめてください、シャレにならない。と引きつり笑いを浮かべて、敦彦は来た時と同じ道へ。山の中に入り、周囲に意識を向けながら歩く。
琴音の店から敦彦の家は、山を1つ越えなければならないがそれほど「とぉーっても遠い」ということもない。
敦彦を引き留められないと諦めた華南なりの、からかい。あの山にはいろんな動物がいる。蛇もクマも、それから、人間化した鬼も。
討伐隊が血眼になって探している、逃走中だという人間化した鬼。年老いた両親と娘を惨殺し、妻をさらって逃げたとされている危険人物。
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