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ツノナシ
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しおりを挟む「敦彦っ!!大丈夫か、怪我はないか!?」
殺意がなかったとはいえ、自由になり緊張が解けて一気に力が抜けた敦彦。喉を押さえて、軽く血が流れていたが少しすると塞がる。
右京と左京はクロキツネを追ってしまったのか、顔を上げると姿が見えない。追いかけるのも銃を向けるのもいいが。一応、クロキツネは助けてくれたんだぞ?
人間化してしまった鬼、ツノナシを討つのがクロキツネの仕事なのか。今回も、夫婦のツノナシの討伐に現れたのは偶然か。それとも、最初から敦彦が目的だったのか?
血相を変えて走ってきた恒彦に「大丈夫。父上こそ、怪我が……」と声をかけるが、強く抱きしめられて声が潰れた。
「あぁよかった。今のはかなり肝を冷やした、寿命が30年は縮んだかもしれん。だがまさか、クロキツネがお前に興味を示すとは……」
「く、苦しい……はぁ。ごめんなさい。あの夫婦のツノナシをどうすれば倒せるかわかったのに僕、言えなかった。クロキツネが来なければ皆、大怪我を負っていた。下手すれば死んでいたっていうのに」
「いいんだ。今回は某も、あんな奇怪な姿のツノナシに気が動転して正しい判断ができなかった。救われた、恩ができたな」
2人のツノナシが融合してしまっている、もはやバケモノの姿はこれが初めて。今まで何人ものツノナシを討伐してきた恒彦でも、冷静さを欠くほどの。
そう、緊張が解けて安心したあまり、敦彦の首を絞めるくらい強く抱きしめてしまうくらい。軽くあの世が見えていたぞ。
これから先、またあんなバケモノじみたツノナシが出ないとも限らない。心しておかなければ。
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