鷹の翼

那月

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邂逅

9P

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 桜鬼はしばらく見守ってみることにした。小紅のそばにいて、彼女がこれからどうするのか様子を見ながら、時に手を差し伸べ助言をする。

 けれど、自分の秘密を守ることもしっかり忘れない。それが桜鬼なりの優しさ。

 世話を焼きすぎるのも小紅を「可愛い」と言って可愛がるのも優しくするのも、全ては自分の秘密を覆い隠すため。

 そのことを――桜鬼の秘密を知っているのは彼を拾ってきた夜鷹と、夜鷹が桜鬼の手を取った時に一緒にいた黒鷹と和鷹。結構最近聞かされた高遠と雪と鳶。それから、過去を知る松原他数名の新選組幹部。

 高遠は実は、桜鬼が突然豹変してしまうことを知っていた。知らなかったのは、それを松原が知っていたということだ。

 小紅はこの先、否が応でも彼の秘密を知ることになる。その時彼女はどうするのだろう?

 桜鬼の過去など、鷹の翼の人達の過去の中では序の口なのだが。あぁは意気込んでいても、仲良くなるにつれ知ることになる真実に彼女は何を思う?

 自分が抱えているものがいかに大したことのないことか、思い知るんだろうな。

 そしたらそのあとは?彼女の赤黒い2つの大きな瞳には、彼らがどう映るのだろう?今とは違った姿?それは良い意味で、それとも悪い意味で?

 桜鬼の隣、わずかに斜め後ろを歩く彼女の足は音を立てない。それに気づいているのか気づいていないのか、歩き出した桜鬼は町にある店の話をしながら着物問屋へと向かう。

 町には何度か来たことがある小紅。日中堂々と、普通の人としては数えるほどしかなくても、その時のことはしっかりと思い出となって残っている。

 彼女は思い出していた。昔、ある人と一緒に笑い合いながら楽しく歩いた時のことを。

 桜鬼も小紅も自分の秘密を洩らさないよう気をつけている。けれど同時に、他愛ない会話を使ってさりげなくお互いの秘密を聞き出そうと探りを入れている。

 今日から仲間、これからよろしく。そう言ったはずなのに。悲しく、寂しい。見せかけの仲間。

 小紅が彼らの本当の意味で仲間になれる日は来るのか?それはいつなのか?まだまだまだまだ、先は長く遠い。見えないほどに遠い未来。

 小紅はまだ知らない、気付かない。もうすぐ自分に襲いかかる恐怖を。


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