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三上黒鴇
16P
しおりを挟む黒鴇も白鴇も、無意識か意識的か致命的な急所は外れている。時間が経てば治るし、ちょっと過激な想いのぶつけ合いに謝罪はない。
咳と怪我でフラフラな黒鴇は小紅にほとんど引きずられながら、去り際に沙雪に声をかけてから部屋を出て行く。
部屋を出てすぐ、桜鬼が顔を出した。ずっとここで待っていた。体格的にも桜鬼が黒鷹を背負う役目を引き受け、足早に城を脱出。
家臣達のところにいた高遠と猫丸も、沙雪の手助けをしていた雪と鳶も合流して、明るくなってきた空を背に家へと帰る。
白鴇は「騒動はなかった」と言っていたし、お上への報告はしないのだろう。しかし、広く細かい情報網を持っているお上の耳には事実が必ず入ってしまう。
近藤が忠告していたように、魅堂黒鷹もとい鷹の翼への捕縛と斬首命令は必ず下る。
責任を取るのは自分だけでいいと遠ざけていた仲間が、家族が戻ってきた。もう、黒鷹は彼らを拒もうと思わない。
帰りながら黒鷹は皆に「あーだこーだ」とさんざん、あの寡黙な鳶にさえお小言を頂戴していた。
家族だから怒っている。その温かさが嬉しくて、むずがゆくて、黒鷹は苦笑を浮かべながら「ごめんね、ありがとう」と1人1人に声をかけた。
鷹の翼の屋敷に着くと桜鬼に下ろしてもらい、作り直したばかりの門を見上げる。振り返って皆と目を合わせ、再び門の奥を見つめると息を吸い込む。
やがて、黒鷹は足を踏み出した。
「ただいま」
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