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第一話
しおりを挟む「まっしー、大輝って足速い?」
「大輝?あー、まぁまぁ速いけど…お前よりは遅いんじゃねェ?」
まっしーに肩を組まれながら大輝の方を見る。
(確かまっしーと同じサッカー部だよな・・・)
大輝とは走った事ないから怖い、俺は初見にはめっぽう弱いんだ。
100メートル走でも初見が苦手って結構あるんだ。先行逃げ切りか、後から追い上げまくるか。
俺は人のペースに結構左右されちゃう。
めちゃくちゃ鼓動がドクドクとうるさくて手がべちゃべちゃだ。うわあああああと叫び出したいほど緊張している。
「お前負けたら結構スコア厳しいかもなァ。」
「う…ごめんまっしー、頑張るよ。」
ウチはグランドが狭くて一周200メートルしかない100メートル走も半円だ。
走り終わった生徒はちょうど俺たちのグランドの反対側、1.2.3.4と順位がかかれたブラックの後ろに並んで座ってぺちゃくちゃとお喋りにしてる、みれば親友の修也は4位の列に並んでいるではないか。
(アイツ体育祭だってのにゲームで夜更かししやがって!ウチのクラスの優勝に全然貢献しねぇじゃん!)
「あ、まっしー。次の次まっしーだよ?」
まっしーは俺の前の組で、振り返って2人で喋ってる。
いつのまにかどんどんと列は消化されていって出番が近づいてくる。
「ーー負けんなよ?」
目を合わせて俺をひと睨みすると、まっしーはスタートレーンに入って行った。
まっしーと走る他の3人に同情する。まっしーは全然気負ってなくて、体育着の袖を肩まで捲ってる。
まっしーは地黒だから二の腕もそんなにコントラストがついてないし筋肉もあって同じ男として憧れる
(・・・まっしーかっこいいなぁ!)
「いちについてっ!・・よーい!!」
パァン!!!
スターターピストルの音と共にスタンディングスタートで走り出す4人、まっしーは毎度ながら少し出遅れたものの一歩一歩が重く、鉤爪で地面を捉えるようにグングンと加速していく。
コーナーに入る頃には先頭になっていて、危なげなく一位でゴールテープを切っていた。
「次の人~!並んで!!」
ハッとする
(やばい!!まっしーガン見してて緊張忘れてた!!)
バクバクの心臓と、ツツツと肘まで伝う脇汗。
俺は3レーン目だから、1レーンの大輝より早くカーブで先頭に入ってインコースを獲りたい。
上等なグランドじゃないから、レーン分けされてるのは直線の20メートルほど、そこから先のカーブ部分は競馬のような荒い位置どりがものをいう。
「位置についてっ!!」
左足を前に膝を軽く落とし、腕は構えずダランと軽く脱力して膝に添える
「よーい」
力を溜め込むようにより沈み込む。
パァン!!!
音が鳴った瞬間に前傾でギュンッ!と矢のように飛び出す!スタートの反応速度は我ながら自慢だ!
(インコースとらなきゃ!インコースっ!)
ぶつからないのを横目で確認して先頭でカーブに入る。
(絶対負けない!一位でまっしーの後ろに並ぶ!)
この瞬間だけは全校生徒が走ってる俺たちを見てる。
整列し並んでる時は聞こえた女子の応援の歓声も、走ってる時は耳をすぎるビュオっという風の音だけしか聞こえない。
コーナーを抜けて直線に入ったところで、ウワッと歓声が耳に入ってくる。
そして気づく、体力がもうきれかかっていることに!!
大輝が序盤に強いヤツかもしれないと考え、インコース取るために過剰に前半に体力を振りすぎた!
(ヤバいっ!めっちゃキツイ!これだから初めて走るヤツとはやりにくいんだッ!)
緊張でフォームの乱れもあったのだろう、尋常じゃない疲れ方をしている。
ーー俺の視界の端、右側にぬっと影が伸びてくる
(げっ!!?嘘だろ!?外から追い上げてきたっ)
直線に入ったところでアウトコースから出てきたのは大輝だった。完全に作戦負け、というか俺の自滅だ。
ブスくれた顔で2位フラッグの列に並ぶ。
まっしーの後ろには大輝が並んでて、同じサッカー部だから話も弾んでる。
(まっしーごめん。)
俺の方に見向きもしないのが、悲しい。
まっしーの中での俺はちょっと仲のいいクラスメイトくらいだからだ。
わざわざ2位の俺に話しかけてもらえるほどの関係値がない。
(ーー俺が1位で後ろに並べてたら。まっしーと喋れたし褒めてもらえたかもしれないのに…)
悲しくて体育座りで俯く、両膝の下から見える芝がユラユラして、ふいにじわっと滲む。
次のやつが後ろに並ぶ前に涙をそっと腕でぬぐって顔をあげた。
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