2 / 9
船からの脱出
02
しおりを挟む
暗闇の中に、輪郭がぼやける視界に、赤い防具に身を固めた襲撃者の姿が映る。
その手に持たれた刃が、足元の照明の光を照り返し、一本の赤い鈍い光の筋を浮かせていた。
暗闇の中に溶けそうになるほどのか弱い光を見て、刃に光を反射するのを抑える塗料が塗られているのが分かった。
あいつら、暗闇に紛れて襲撃をするのに、慣れているのか!
「ひ、ひぃ、お願いです。殺さないでください!」
青年は分析をしながら、向かってくる襲撃者に驚き、おびえるふりをした。
さぁ、来い。斬りかかってくるんだ!
青年に駆け寄ってきた襲撃者は、青年の様子に構うことなく、容赦なく刃を振り上げる。
今だ!
僕が、こいつを殺すには、この瞬間を成功させるしかない!
青年は臆することなく、相手の懐へ飛び込み、喉元を狙い、手に持った鉄針を刺し込む。
しかし、青年の行動に襲撃者は動じる様子もなく、その体をひらりと後退させ、鉄針の切っ先から逃れた。
「その服装、この船のオメガだな、オメガの部屋にも居らず、この場所に逃れているとは、お前がレブルだな? 答えろ」
「さぁ、どうでしょう?」
尋ねてくるように聞こえる男の問いに、青年は思わせぶりな曖昧な返事を返した。
襲撃者の言葉から、彼らの目的が自分であると考えた青年は、自分が狙われる理由を予想していた。
おそらく、自分が狙われたのは、自分が作り出したあるモノを相手が自分たちのものにしようと考えてのことなのだろう、と。
それならば、自分が作り出したあるモノの製造方法を自分の命を保証する交渉材料にすれば良い。
「貴方たちの目的は、なんです? レブルの作り出した薬が目的ですか?」
青年は男に襲撃の目的の確認を取ろうとする。
もし、早合点をして、自分の交渉材料を先に出して、相手の求める目的と違えば、交渉に不利になるからだ。
しかし、そんな青年の考えは的外れのものだった。
「お前の作り出した薬などに興味はない」
男はそれを言葉にした後、淡々と告げた。
「俺たちの目的はお前と、この船の人間全てを殺すことなのだから」
「んなっ!? そんなことをして、何になると言うんですか!?」
男の常軌を逸した言葉に、青年は冷静さを忘れ、思わず聞き返していた。
襲撃で、人が殺し殺されることは珍しいことではない。
しかし、その目的は、船の食料や船や衣服などの素材を含めた物資を手に入れることで、人間の命を狙うことなどない。
人をわざわざ殺すことに、メリットなどないし、奪い奪われる弱肉強食のこの世界においても、いちおう人殺しは禁忌となっている。
だが、彼に罪を犯しているという意思は感じられない。
殺人を楽しんでいるという感情も感じなかった。
「忌々しいウィルスに打ち克つためだ!」
「!?」
言葉の意味は分からなかったが、男の目に、自分の行動を正しいと信じる意思をが込められていた。
その目を見たとき、青年の中から怒りが沸き上がってきた。
今まで産まれた性別のために、人として扱わられず、ぞんざいに扱られ、手ひどい仕打ちを受けてきた。
その立場から脱しようと死ぬ思いで、もがいて、這い上がってきたのだ。
そして、やっと立場を手に入れた途端、自分のこれまでの行いを断罪するように、襲撃者たちは現れた。
他の奴らは許されて、僕は許されないというのか?
ふざけるな!
「何の理由があるのか知らないが、殺されるなんて、お断りだ!」
青年は吠えるように言いながら、鉄針を構え、襲撃者の男を見据える。
男はそんな青年を憐れむような視線を返した。
「そうだろうな、命を奪われるお前たちの立場からすれば、納得できることはではないだろう。……だが、仕方のないことだ。せめて、痛みと苦しみを感じることなく、安らかに天へ昇ると良い」
そして、男は刃を握り直すと、青年と対峙した。
その手に持たれた刃が、足元の照明の光を照り返し、一本の赤い鈍い光の筋を浮かせていた。
暗闇の中に溶けそうになるほどのか弱い光を見て、刃に光を反射するのを抑える塗料が塗られているのが分かった。
あいつら、暗闇に紛れて襲撃をするのに、慣れているのか!
「ひ、ひぃ、お願いです。殺さないでください!」
青年は分析をしながら、向かってくる襲撃者に驚き、おびえるふりをした。
さぁ、来い。斬りかかってくるんだ!
青年に駆け寄ってきた襲撃者は、青年の様子に構うことなく、容赦なく刃を振り上げる。
今だ!
僕が、こいつを殺すには、この瞬間を成功させるしかない!
青年は臆することなく、相手の懐へ飛び込み、喉元を狙い、手に持った鉄針を刺し込む。
しかし、青年の行動に襲撃者は動じる様子もなく、その体をひらりと後退させ、鉄針の切っ先から逃れた。
「その服装、この船のオメガだな、オメガの部屋にも居らず、この場所に逃れているとは、お前がレブルだな? 答えろ」
「さぁ、どうでしょう?」
尋ねてくるように聞こえる男の問いに、青年は思わせぶりな曖昧な返事を返した。
襲撃者の言葉から、彼らの目的が自分であると考えた青年は、自分が狙われる理由を予想していた。
おそらく、自分が狙われたのは、自分が作り出したあるモノを相手が自分たちのものにしようと考えてのことなのだろう、と。
それならば、自分が作り出したあるモノの製造方法を自分の命を保証する交渉材料にすれば良い。
「貴方たちの目的は、なんです? レブルの作り出した薬が目的ですか?」
青年は男に襲撃の目的の確認を取ろうとする。
もし、早合点をして、自分の交渉材料を先に出して、相手の求める目的と違えば、交渉に不利になるからだ。
しかし、そんな青年の考えは的外れのものだった。
「お前の作り出した薬などに興味はない」
男はそれを言葉にした後、淡々と告げた。
「俺たちの目的はお前と、この船の人間全てを殺すことなのだから」
「んなっ!? そんなことをして、何になると言うんですか!?」
男の常軌を逸した言葉に、青年は冷静さを忘れ、思わず聞き返していた。
襲撃で、人が殺し殺されることは珍しいことではない。
しかし、その目的は、船の食料や船や衣服などの素材を含めた物資を手に入れることで、人間の命を狙うことなどない。
人をわざわざ殺すことに、メリットなどないし、奪い奪われる弱肉強食のこの世界においても、いちおう人殺しは禁忌となっている。
だが、彼に罪を犯しているという意思は感じられない。
殺人を楽しんでいるという感情も感じなかった。
「忌々しいウィルスに打ち克つためだ!」
「!?」
言葉の意味は分からなかったが、男の目に、自分の行動を正しいと信じる意思をが込められていた。
その目を見たとき、青年の中から怒りが沸き上がってきた。
今まで産まれた性別のために、人として扱わられず、ぞんざいに扱られ、手ひどい仕打ちを受けてきた。
その立場から脱しようと死ぬ思いで、もがいて、這い上がってきたのだ。
そして、やっと立場を手に入れた途端、自分のこれまでの行いを断罪するように、襲撃者たちは現れた。
他の奴らは許されて、僕は許されないというのか?
ふざけるな!
「何の理由があるのか知らないが、殺されるなんて、お断りだ!」
青年は吠えるように言いながら、鉄針を構え、襲撃者の男を見据える。
男はそんな青年を憐れむような視線を返した。
「そうだろうな、命を奪われるお前たちの立場からすれば、納得できることはではないだろう。……だが、仕方のないことだ。せめて、痛みと苦しみを感じることなく、安らかに天へ昇ると良い」
そして、男は刃を握り直すと、青年と対峙した。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる