【完結】死の運命を変えたい吸血鬼令嬢は、幸せな結末をあきらめない

夏芽みかん

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【2】パーティーでの騒動

21.現代知識を活かせてる?

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 家族会議の後、コーデリアと一緒に、裏庭の井戸のあたりで汚してしまったドレスを洗う。
 
 水はまだ冷たかった。もともと冷たさをそんなに感じない私が冷たいと思うのだから、コーデリアには相当冷たいと思うのだけど、彼女は全く気にしない様子でテキパキと作業する。ああ、洗濯機が欲しい……。ボタンを押せば、あと洗ってくれるって素晴らしいわよね。吸血鬼の力でどうにかできないかしら……。
 
 あ、念力使えたっけ。

 桶に入れた水に、泥だらけのドレスを押し込んで、前世の記憶の洗濯機をイメージして回す。疲れた時に、ひたすら洗濯ものが洗われる様子を見てたことがあったな……。
 
 まさか、こんな形で役に立つとは。

 桶の中で、ドレスは思った通りに水と泡と一緒に円状に動いた。わっしゃわっしゃと洗っていると、覗き込んできたコーデリアが感嘆の声をあげた。

「お嬢様、それ、すごいですね」

「ちょっと、でも、疲れるかも」

 予想以上に体力を消耗するので止める。普通に手で洗ってみると、力が強いせいか、良い感じに汚れが落ちる。

「お嬢様、すごいですね」

「これで、何とかなりそうね。いつも大変ね。水も冷たいし。ありがとう」

「そんな、仕事ですから」

 ああ……、またコーデリアが涙ぐんでいる。いつになったら慣れてくれるのかしら。
 日本人だったせいで腰が低くなりすぎてる?そんなこともないと思うけど。
 使用人に全部やらせるとか、甘え過ぎじゃない?そもそも。

 そんなことを考えていたら。
 ビリッ。布が破れる音。ひっ。コーデリアの悲鳴。

「あー……」

 強くやり過ぎて、ドレスが破れていた。二人で顔を見合わせ、びちゃびちゃで破れたドレスを茫然と見つめる。

 とりあえず、乾燥させ、形を整え、彼女に付き添ってもらってアーノルドの部屋へ行った。いつもより顔色が悪そうなアーノルドは、それでもきちんとした格好で出てきて、きれいになったけど一部破れたドレスと私を見比べた。私は申し訳なさで床をじっと見つめる。

「ごめんなさい、とても綺麗なものだったのに」

「いえ、それよりも、ご自身で洗濯を……? お嬢様が……?」

 そっち? 見上げると、瞳を潤ませている。どういう感情? 感動してるの? どういうこと? ……自分のことを自分でやってこの反応されるってどんだけよ、本当。

「……コーデリアにも、手伝ってもらったけど」

「アーノルド、お嬢様、すごいのよう、こう、水をぐるぐるーって」

 コーデリアが手で空気をぐるぐる回す仕草をした。……かわいいわね。

「回すと汚れ落ちが良いのね。擦らないから生地の痛みも少なそうだし」

「そうなのか――そんな洗い方は、考えたことがなかったな。さすが、カミラ様」

 アーノルドは首に手を当てて、うんうんと頷いている。
 前世の知識が役に立ったパターンでいいのかしら……? これは……?

 アーノルドはすっかり元の調子に戻ったように私を見ると、手をポンと叩いた。

「旦那様から、今度、王宮でパーティーがあると聞きました。新しいドレスをご準備しておきますね!」

 嬉しそうににこにこしているので、「ありがとう」とだけ伝えた。
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