【完結】死の運命を変えたい吸血鬼令嬢は、幸せな結末をあきらめない

夏芽みかん

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【2】パーティーでの騒動

20.パーティーの予定

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 翌日、お父様は、現女王のグウェンと話をしてきたと私たちに告げた。
 
「ただ、お前たちが行くのであれば、西の地方に霧を発生させた方が良いだろうという話になって、作物の収穫の時期とも被るので1月ほど待ってほしいということだ」

 私たちは顔を見合わせた。私の体力も完全には回復していないし、それは構わなかった。
 霧が発生してくれていた方が移動もスムーズだ。
 日光がさんさんとしていると、死にはしないけど動く気力がなくなってしまう。

「今年成人の貴族の子女が月夜宮げつやきゅうに滞在するのはあと7日程だ。それで、そのルシアという子を、私たちの存在をあまり目立たせずに、郷里返さず王都に滞在させるため、トーデン王子のお目に留まったという形にしたらどうかという話になった」

 私はうんうんと頷いた。このあたりの流れはゲームと一緒だ。トーデン王子の目に留まったため、ルシアの滞在期間が延びる。まあゲームだとトーデンとお祭りで知り合って、惚れられるのであって、私たちのお膳立てがあってじゃないけど。

「で、王子と自然な感じで知り合った形にするため、急遽きゅうきょ4日後に、トーデン王子の結婚相手になりそうな年齢の女性を集めたダンスパーティーを行うことになった。まあ、王子ももう25歳で、もともとグウェンも、早く結婚相手をと願っていたし。ルシアだけじゃなく、結婚相手になりそうな女性をそこで複数名見繕みつくろえば良いんじゃないかと」

 お父様はエリオットを見つめた。

「お前もついでに出席して、《恋人》を見繕ってこい。周辺地域で、話題になってるみたいだぞ。『金髪に青い瞳の娼婦が気を失った状態で見つかる』と」

 エリオットは険しい顔をしている。

「わかってるよ。ただ、噛み傷は治してるし、場所も散らしてる。翌日には目が覚めるくらいの量しか吸ってないし、記憶も消してるよ」

「『金髪に青い瞳』は散らせないのか。共通点があると、噂になりやすいぞ」

「……父さんに言われたくないね」

 私が前回アーティに襲いかかったときのように――あれは私が飢えた状態だったので、通常よりひどいけど――私たちは、衝動にまかせて吸血すると、通常の人間相手だと死ななくても、かなり生命力を奪うほどの吸血をしてしまう。

 そのため、ほどよく吸血するためには衝動を抑える必要がある。衝動の押さえ方は、人それぞれだけど、一番有効なのは相手を傷つけたくないと思うこと。
 
 そのためにも《恋人》を作ることは理にかなっていて、《恋人》に愛情を感じて、相手を傷つけたくないと思えば、程よく吸血が行える。

 見ず知らずの相手から、吸血する場合にはそうはいかない。その場合は、自我を抑えるために、自分にとって大切な誰かに似た相手を選ぶことが多い。
  
 エリオットの直近の《恋人》のサラも金髪に青い瞳をしていた。死んだお母様、ベネッタの髪と瞳の色。お父様も、エリオットも、お母様の姿に縛られている。

 お父様はこほんと咳ばらいをした。

「それで、だ。アーロンもパーティーに連れて行ってやってくれないか」

 アーロンがびくっと体を震わせる。

「僕も?」

「家族会議で話して考えたのだが、ここでの、この生活がずっとできるわけではないし――、場合によってはお前たちが、それぞれ私から離れることもあるだろう。もし、外に出れば、同族やハンターや、静かに暮らせる環境ばかりではない。人の血を吸うことも、できるようにならねば」

 優しい弟はうつむいて黙ってしまった。
 
 ――でも。彼には辛いかもしれないけれど、一理ある。人間の血を吸わないと、吸血鬼の十分な力は発揮できない。もし、アーロンが今別の吸血鬼やハンターに襲われれば、勝てないだろう。

「エリオット、アーロンのことを頼むよ」

 エリオットはお父様と弟を見比べて、頭をかきながら「わかった」とぶっきらぼうに言った。
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