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【4】解放と、対決と、決別
69.中に潜んでいるのは、誰
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エリオットは、私とコーデリアを土の柔らかいところへと横たえた。だらりと地面に手足を投げ出した。コーデリアを吸血鬼にするために、大量に血を流し込んだので倦怠感が強く、身体が動かない。こちらを見下ろすエリオットに聞く。
「コーデリアは……?」
「――母親の血を吸って、眠ってる。起きたら立派に吸血鬼だよ」
「そう……、良かった」
血を流し込んでから、死んで、最初の吸血を済ませて吸血鬼になる間には、少し時間が必要だ。少し遅れて、お父様がアーノルドとミゲルを抱えて飛来した。アーノルドはミゲルと横たわるコーデリアの手をとって、≪恋人≫たちの名前を呼んだ。
「ミゲル……、コーデリア……」
「アーノルド。僕らはみんな、無事だ」
ミゲルは微笑むと、アーノルドとコーデリアを抱きしめた。
エリオットは、お父様を見つめて、聞いた。
「――父さん、何でここに」
「――ヴィルヘルムとの因縁は私にある。やはり、直接、対応せねば、と思ってな。フェンツ子爵殿に、ルシアお嬢様とアーロン達が連れて行かれて、ディケンズ子爵領へ集まるよう周辺領主に知らせがあったと聞いた」
「館には、誰もいないの? グローリアは?」
「――お前たちが出てから寝たきりだ。グウェンとトーデンに預けてきたよ」
エリオットは地面を見つめたまま、吐き捨てるように言った。
「あいつの思う通りになったな。俺たちは、もう彼らにとって『化け物』だ」
「申し訳ございません」
アーノルドがぼたぼたと涙をこぼした。
「私が、捕まらなければ」
「いいのよ、アーノルド。そもそもグレンが≪聖水≫を使わなければこんなことにならなかったんだから」
――あの執事見習、どうしてやろうかしら。
私はアーノルドに手を伸ばそうとして、身を起こしてそのまままた地面に倒れた。まともに体が動かない。エリオットは私の身体を支えると、首を目の前に差し出した。私は、そこに牙を向けて、一瞬躊躇した。アーティに他の人から血をもらわないって言ってたし。明言はしていないけれど、特にエリオットは。その瞬間、エリオットの瞳がぎろりと私の目を見た。瞳の中心に、一瞬赤い色が見えて、私は目を見開いた。でもそれは、すぐに元に戻って、彼は落ち着いた口調で言った。
「カミラ、血を飲んでくれ。今、霧化できるのは、父さんと俺とお前だけだ。早く撤退しないと」
――気のせい?
――緊急事態だものね。私は、牙を突き立てた。
だいぶ血を失っていたので、多めに吸い込んでしまって、エリオットの顔色が悪くなったけれど、私は何とか動ける程度に回復した。立ち上がり、服をはたく。お父様が私たちを見回して言った。
「とりあえず――辺境伯の館に移動して、これからの動きを考えよう」
***
辺境伯はぼろぼろの私たちとお父様を驚いた顔で迎えた。
「ルゼット伯爵まで、王都から出てこられるとは。――ディケンズ子爵の領地で、何があったんですか。申し訳ありません。本来私も赴くべきだったのですが、しばらく領地を空けた穴埋めと、弟の容体が――」
「いいんです。こちらの事情に貴方方を巻き込んで申し訳ない」
事のあらましを説明し、お父様は目を伏せた。
「ヴィルヘルムは、目的を達したはずだ。私たちの凶暴さを見せるという。しかも、彼はルシアお嬢様の血を持っている。貴族たちを支配から解放し、私たちを、王族を襲わせるようにするだろう」
辺境伯が唸った。
「王女は私たちに、通商と武器の所持を許可してくださった。私たちは、王女に逆らう気はないのだが――、まだ、全ての領主にそれを伝え、まとめきれていない。騒ぎにより、貴方方と一緒にいる王女に疑念を抱き――単独でリステア王国の側につきたいという領主が出てくると、止められない」
「――でも、ヴィルヘルムを殺してしまうと、リステア王国が攻撃を仕掛けてくるって言っていたわ。だから、血を入れて、操らないと。辺境伯が言った通り、こちらは、そちらに協力する気はないから、というのをきちんと伝えさせないと」
お父様は頷いた。
「やつは、目的を果たし、一度リステアへ戻るだろう。そこを狙おう」
ディケンズ子爵領から、隣国のリステア王国まで抜けるには、辺境伯の領地を通らなければならない。子爵領からここまでは、馬で1日くらいだ。
「明日には、こっちに来るわね」
私たちは顔を見合わせた。そこを狙うしかないだろう。
来客用の部屋を借り、ベッドに横になる。ルシアの血を飲んで回復したとはいえ、少しでも休んでおかないと。アーノルドとアーロンは≪聖水≫の影響で霧化できない。私と、エリオットとお父様で処理しなくては。
「カミラ」
――ふと、エリオットの声が聞こえて、私は目を開けた。
身体の上に重みを感じる。
「ちょっと、何してるのよ」
慌てて起き上がる。彼が上に伸し掛かっていた。跳ねのけようとするが、強い力で腕を押さえられる。
「エリオット?」
暗闇で、彼の赤くなった瞳が光った。――様子が、普通じゃない。
「どきなさい」
私は、強く言うと、身体を霧状にして、逃れようとした。その瞬間、ぱしゃん、と身体に、べったりとした液体がかかった。それは、ねっとりと身体にねばりつく。私は、ぞわぞわとした寒気を感じた。エリオットが、空になった瓶を放った。カシャン、とそれが床に当たって割れる音が響いた。
「それ、≪聖水≫……」
呟いて、私はいつものように、身体の変化ができないことに気がついた。頭からかぶった≪聖水≫は、油が絡みつくようにべっとりと身体中に染みこんでくる。
「何する……っ」
何するのよ、と叫ぼうとして、唇を塞がれた。ひんやりとした自分と同じ、吸血鬼の唇が重なってくる。
「やめてよ!」
身体を押し話すと、エリオットは熱に浮かされたように、独り言のように呟いた。
「なあ、カミラ。領主や領民は俺たちをどう思ったかな。すっかり化け物だって思っただろうな。――ヴィルヘルムの思う通りだ」
エリオットは泣きそうな声で言った。
「――そう、最初から化け物だ。でも、それでいい。どうせ全員、俺たちより先に死ぬんだから。アーティも――、みんな、吸血鬼以外は、すぐに死んでしまう。俺たちは――お互いしか、いないだろ」
彼は動きを止めると、赤い瞳をこちらに向けて、呟いた。
「ルシアに、仲間になってもらおう。それで、やり直そう」
私はさっと血の気がひくのを感じた。以前聞いた、エリオットの言葉を思い出す。
『ルシアを無理に吸血鬼にしてまで、今の暮らしを続けたいって思ってるなら、俺はそれが許せないよ』
――そんなこと言うはずないじゃない。
エリオットは私を抱きしめると、耳元で囁いた。
「なあ、カミラ。お前はいなくならない。俺にはお前しかいないんだよ。――置いていかないでくれよ」
私は、おかしくなったリアーナの気持ちを思った。
病気で死んでいく≪恋人≫を置いて、新しい人を探しにパーティーに向かう。
新しい誰かを確保しないと、自分は飢えてしまうから。でも、その時に何を思う?
ゲームの中でおかしくなったカミラはどうだっただろうか。
ルシアと関わることで、新しい何かを見つけていく、エリオットやアーロンに対して、カミラは、何を思った? 今、エリオットは、ゲームの中でおかしくなってルシアを襲う化け物になったカミラと、同じことを思っているんじゃない。
――自分だけ取り残される寂しさ。――『置いていかないで』
私はエリオットに額をくっつけると、赤く染まった瞳を見つめた。
「置いていかないわよ」
彼の瞳の色が青い、いつもの色に戻った。
「俺――、俺は、何を?」
混乱したように瞬きを繰り返す。私を押さえる腕の力が弱まった。
私は、その首筋に噛みついて、血を吸い上げた。
――やっぱり
それは、リアーナの血を飲んだ時と同じ味だった。
「あ……が……」
呻き声をあげて、どさりとエリオットはベッドの上に倒れた。私はポケットを探る。
ルシアの執事見習のダレンから回収した≪聖水≫の瓶があった。それをエリオットに向かってふりかけた。
「あああ」
エリオットが身体を痙攣させた。――吸血鬼の霧化を防ぐっていうのなら、目に見えない何かにも効果はあるんじゃないの。
私はエリオットを抱きしめると、背中を軽くさすった。
「そんなことしなくても、あなたを、置いていかないわよ。私たちは――家族だもの」
次の瞬間、エリオットの背中から、何か人のような形の、黒い影のようなものが立ち上がった。があああと、エリオットは獣の鳴き声のような声を上げる。
「――ナタリー!? 何なの、エリオットの中から出て行きなさいよ!」
私はその影を睨みつけた。それは、腕のような部分をぶんっと振った。それに併せて、エリオットの腕が動く。私の身体は、吹き飛ばされて壁にぶつかった。霧化できないので、もろに壁に頭を打ち付けてしまう。手で触ると、べっとりと血がついた。
「エリオット!」
私は彼の名前を叫んだ。エリオットは「あ」と小さい声を上げて、青い瞳をこちらに向けた。
「カ、ミ、」
口をぱくぱくとさせて、彼は急に立ち上がった。瞳が、また赤くなっている。
「――る、し、あ」
エリオットの身体から出た影が、ずるずると部屋を進んだ。それに引きずられるように、彼の身体も動く。
――ちょっと、これ、どうしたらいいのよ。≪聖水≫の効果で、実体化してる?
でも、エリオットの身体から出て行ってもらわないと困る。
「ルシアを、吸血鬼にする。やり直すんだ、最初から」
エリオットは寝言のように呟くと、部屋を出て行った。それは、エリオットの中にいるものの言葉だ。
「コーデリアは……?」
「――母親の血を吸って、眠ってる。起きたら立派に吸血鬼だよ」
「そう……、良かった」
血を流し込んでから、死んで、最初の吸血を済ませて吸血鬼になる間には、少し時間が必要だ。少し遅れて、お父様がアーノルドとミゲルを抱えて飛来した。アーノルドはミゲルと横たわるコーデリアの手をとって、≪恋人≫たちの名前を呼んだ。
「ミゲル……、コーデリア……」
「アーノルド。僕らはみんな、無事だ」
ミゲルは微笑むと、アーノルドとコーデリアを抱きしめた。
エリオットは、お父様を見つめて、聞いた。
「――父さん、何でここに」
「――ヴィルヘルムとの因縁は私にある。やはり、直接、対応せねば、と思ってな。フェンツ子爵殿に、ルシアお嬢様とアーロン達が連れて行かれて、ディケンズ子爵領へ集まるよう周辺領主に知らせがあったと聞いた」
「館には、誰もいないの? グローリアは?」
「――お前たちが出てから寝たきりだ。グウェンとトーデンに預けてきたよ」
エリオットは地面を見つめたまま、吐き捨てるように言った。
「あいつの思う通りになったな。俺たちは、もう彼らにとって『化け物』だ」
「申し訳ございません」
アーノルドがぼたぼたと涙をこぼした。
「私が、捕まらなければ」
「いいのよ、アーノルド。そもそもグレンが≪聖水≫を使わなければこんなことにならなかったんだから」
――あの執事見習、どうしてやろうかしら。
私はアーノルドに手を伸ばそうとして、身を起こしてそのまままた地面に倒れた。まともに体が動かない。エリオットは私の身体を支えると、首を目の前に差し出した。私は、そこに牙を向けて、一瞬躊躇した。アーティに他の人から血をもらわないって言ってたし。明言はしていないけれど、特にエリオットは。その瞬間、エリオットの瞳がぎろりと私の目を見た。瞳の中心に、一瞬赤い色が見えて、私は目を見開いた。でもそれは、すぐに元に戻って、彼は落ち着いた口調で言った。
「カミラ、血を飲んでくれ。今、霧化できるのは、父さんと俺とお前だけだ。早く撤退しないと」
――気のせい?
――緊急事態だものね。私は、牙を突き立てた。
だいぶ血を失っていたので、多めに吸い込んでしまって、エリオットの顔色が悪くなったけれど、私は何とか動ける程度に回復した。立ち上がり、服をはたく。お父様が私たちを見回して言った。
「とりあえず――辺境伯の館に移動して、これからの動きを考えよう」
***
辺境伯はぼろぼろの私たちとお父様を驚いた顔で迎えた。
「ルゼット伯爵まで、王都から出てこられるとは。――ディケンズ子爵の領地で、何があったんですか。申し訳ありません。本来私も赴くべきだったのですが、しばらく領地を空けた穴埋めと、弟の容体が――」
「いいんです。こちらの事情に貴方方を巻き込んで申し訳ない」
事のあらましを説明し、お父様は目を伏せた。
「ヴィルヘルムは、目的を達したはずだ。私たちの凶暴さを見せるという。しかも、彼はルシアお嬢様の血を持っている。貴族たちを支配から解放し、私たちを、王族を襲わせるようにするだろう」
辺境伯が唸った。
「王女は私たちに、通商と武器の所持を許可してくださった。私たちは、王女に逆らう気はないのだが――、まだ、全ての領主にそれを伝え、まとめきれていない。騒ぎにより、貴方方と一緒にいる王女に疑念を抱き――単独でリステア王国の側につきたいという領主が出てくると、止められない」
「――でも、ヴィルヘルムを殺してしまうと、リステア王国が攻撃を仕掛けてくるって言っていたわ。だから、血を入れて、操らないと。辺境伯が言った通り、こちらは、そちらに協力する気はないから、というのをきちんと伝えさせないと」
お父様は頷いた。
「やつは、目的を果たし、一度リステアへ戻るだろう。そこを狙おう」
ディケンズ子爵領から、隣国のリステア王国まで抜けるには、辺境伯の領地を通らなければならない。子爵領からここまでは、馬で1日くらいだ。
「明日には、こっちに来るわね」
私たちは顔を見合わせた。そこを狙うしかないだろう。
来客用の部屋を借り、ベッドに横になる。ルシアの血を飲んで回復したとはいえ、少しでも休んでおかないと。アーノルドとアーロンは≪聖水≫の影響で霧化できない。私と、エリオットとお父様で処理しなくては。
「カミラ」
――ふと、エリオットの声が聞こえて、私は目を開けた。
身体の上に重みを感じる。
「ちょっと、何してるのよ」
慌てて起き上がる。彼が上に伸し掛かっていた。跳ねのけようとするが、強い力で腕を押さえられる。
「エリオット?」
暗闇で、彼の赤くなった瞳が光った。――様子が、普通じゃない。
「どきなさい」
私は、強く言うと、身体を霧状にして、逃れようとした。その瞬間、ぱしゃん、と身体に、べったりとした液体がかかった。それは、ねっとりと身体にねばりつく。私は、ぞわぞわとした寒気を感じた。エリオットが、空になった瓶を放った。カシャン、とそれが床に当たって割れる音が響いた。
「それ、≪聖水≫……」
呟いて、私はいつものように、身体の変化ができないことに気がついた。頭からかぶった≪聖水≫は、油が絡みつくようにべっとりと身体中に染みこんでくる。
「何する……っ」
何するのよ、と叫ぼうとして、唇を塞がれた。ひんやりとした自分と同じ、吸血鬼の唇が重なってくる。
「やめてよ!」
身体を押し話すと、エリオットは熱に浮かされたように、独り言のように呟いた。
「なあ、カミラ。領主や領民は俺たちをどう思ったかな。すっかり化け物だって思っただろうな。――ヴィルヘルムの思う通りだ」
エリオットは泣きそうな声で言った。
「――そう、最初から化け物だ。でも、それでいい。どうせ全員、俺たちより先に死ぬんだから。アーティも――、みんな、吸血鬼以外は、すぐに死んでしまう。俺たちは――お互いしか、いないだろ」
彼は動きを止めると、赤い瞳をこちらに向けて、呟いた。
「ルシアに、仲間になってもらおう。それで、やり直そう」
私はさっと血の気がひくのを感じた。以前聞いた、エリオットの言葉を思い出す。
『ルシアを無理に吸血鬼にしてまで、今の暮らしを続けたいって思ってるなら、俺はそれが許せないよ』
――そんなこと言うはずないじゃない。
エリオットは私を抱きしめると、耳元で囁いた。
「なあ、カミラ。お前はいなくならない。俺にはお前しかいないんだよ。――置いていかないでくれよ」
私は、おかしくなったリアーナの気持ちを思った。
病気で死んでいく≪恋人≫を置いて、新しい人を探しにパーティーに向かう。
新しい誰かを確保しないと、自分は飢えてしまうから。でも、その時に何を思う?
ゲームの中でおかしくなったカミラはどうだっただろうか。
ルシアと関わることで、新しい何かを見つけていく、エリオットやアーロンに対して、カミラは、何を思った? 今、エリオットは、ゲームの中でおかしくなってルシアを襲う化け物になったカミラと、同じことを思っているんじゃない。
――自分だけ取り残される寂しさ。――『置いていかないで』
私はエリオットに額をくっつけると、赤く染まった瞳を見つめた。
「置いていかないわよ」
彼の瞳の色が青い、いつもの色に戻った。
「俺――、俺は、何を?」
混乱したように瞬きを繰り返す。私を押さえる腕の力が弱まった。
私は、その首筋に噛みついて、血を吸い上げた。
――やっぱり
それは、リアーナの血を飲んだ時と同じ味だった。
「あ……が……」
呻き声をあげて、どさりとエリオットはベッドの上に倒れた。私はポケットを探る。
ルシアの執事見習のダレンから回収した≪聖水≫の瓶があった。それをエリオットに向かってふりかけた。
「あああ」
エリオットが身体を痙攣させた。――吸血鬼の霧化を防ぐっていうのなら、目に見えない何かにも効果はあるんじゃないの。
私はエリオットを抱きしめると、背中を軽くさすった。
「そんなことしなくても、あなたを、置いていかないわよ。私たちは――家族だもの」
次の瞬間、エリオットの背中から、何か人のような形の、黒い影のようなものが立ち上がった。があああと、エリオットは獣の鳴き声のような声を上げる。
「――ナタリー!? 何なの、エリオットの中から出て行きなさいよ!」
私はその影を睨みつけた。それは、腕のような部分をぶんっと振った。それに併せて、エリオットの腕が動く。私の身体は、吹き飛ばされて壁にぶつかった。霧化できないので、もろに壁に頭を打ち付けてしまう。手で触ると、べっとりと血がついた。
「エリオット!」
私は彼の名前を叫んだ。エリオットは「あ」と小さい声を上げて、青い瞳をこちらに向けた。
「カ、ミ、」
口をぱくぱくとさせて、彼は急に立ち上がった。瞳が、また赤くなっている。
「――る、し、あ」
エリオットの身体から出た影が、ずるずると部屋を進んだ。それに引きずられるように、彼の身体も動く。
――ちょっと、これ、どうしたらいいのよ。≪聖水≫の効果で、実体化してる?
でも、エリオットの身体から出て行ってもらわないと困る。
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