【完結】悪食エルフと風の魔法使いは、辺境遺跡で相棒になりました。

夏灯みかん

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14.隠し空間の散策

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 俺もエドラヒルの後に続くように、その空間の裂け目へと入って行く。

 くぐり抜けた瞬間、周りの空気が変わった。
 古びた古文書のような匂いが周囲に漂う。
 清廉な風の精霊が自由に動き回る草原から、精霊の動きがほとんどない、密度の高い異空間に入り込んだ感覚がした。

「ここは……」

 俺は足元を見た。柔らかな踏み心地。年季の入ったワインのような色の、重厚な赤い絨毯が敷かれている。
周りを見回すと、そこは小さな広間だった。
 カウンターのようなスペースがあり、その先に真っすぐ廊下が伸びている。
 廊下の先にいくつか小部屋があるようだ。

「……宿、のような形だ……」

 俺は例の水晶を出すと、魔力を流した。

「……!」

 思わず目を見張る。水晶が鈍く光って、外にいたときと違い、はっきりとした反応を示していた。

「――エドラヒル、ここに捜しているものが、ありそうだ!」

 思わず声を弾ませてそう言うと、エドラヒルはうなずいた。

「それは良かったな。……探索はさっさと済ませた方がいいぞ」

 後ろを振り返り、何気ない口調でつぶやく。

「――しばらくすると、入り口が閉じてしまうからな」

 俺はびくっとして、入ってきた穴を見た。暗闇の向こうに、エドラヒルが生やした木が見える。その入口の周りの暗闇が、傷口が塞がるようにじわじわと縮んでいく。

「――閉じ込められたら、出られるか?」

 思わずそう聞くと、エドラヒルは肩をすくめた。

「入れたなら出られると思うが、わからんな」

「……」

 エドラヒルはエルフだ。たとえ、異空間に閉じ込められたとしても、食事をせずとも長い時間生きていることができるだろう。だからこんなに悠長なのだろうが――

俺が閉じ込められたら――
食料も、水もないこの空間で、長くはもたない。

「――はやく、捜そう」

 俺は水晶を片手に、足早に奥へと進んだ。

 杖の先に魔法の光を灯し、進む。廊下の奥には、四部屋ほどの小部屋が通路に面して並んでいるだけだった。どの部屋も、扉は閉まっている。

 俺は水晶に意識を集中した。
 それぞれの部屋の前を往復すると、水晶は右奥の部屋の前で反応を強めた。

「――この部屋か?」

 俺は閉まった扉のドアノブを見つめた。
 ――開けて、大丈夫か? 魔法で壊すか?
 見る限り普通の小部屋の集まりにしか見えないが、何らかの理由があり、隠し空間だったのだ。何か、仕掛けのようなものがある可能性も……

「私が開けてやろう」

 迷っている俺の後ろから、エドラヒルの声がした。
 同時に、――ガチャというドアの音。

「うわ、エドラヒル――開けて、大丈夫か!?」

 慌てて後ろを振り返ると、エドラヒルが手のひらを上向きにして俺の後ろに立っていた。
 手のひらの上には植物の種があり、そこから緑の蔦が伸びている。
 ドアノブを見れば、その蔦が絡まっていた。
 ――蔦を操って、扉を開けたようだ。

「――大丈夫では、なさそうだ」

 エドラヒルは真剣な声でつぶやいた。
 
 ――シュン!

 何か、音がした。目の前の空間が歪み、暗闇が走った。
 エドラヒルが手に持っていた蔦の出ている種を放り投げた。
 緑の蔦が穴に落ちるかのように、ドア前の暗闇に吸い込まれて――途中で“断ち切られた”ように、忽然と消えた。

 後には何事もなかったように、空いた扉があるだけ――。

「――捕獲用の空間魔法だな。勝手に入ろうとすると、発動し、捕獲するようだ」

 エドラヒルはまた何気なく言うと、俺に言った。

「風で扉をもう少し開けてみろ。優しくな。強く開けると、また何か発動するかもしれん」

 俺はそよ風を起こすと、扉をゆっくりと押し開けた。
 キィィィィィ――と、古びた音を立てて扉がゆっくりと開いた。
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