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1.元聖女は冒険者になりました。
第3話
「まさか、いつも三日かかる道が一日で着いたなんて……」
国境の壁のところで、私を運んでくれた兵士さんは、額の汗を拭いながら驚いた表情をした。
「聖女様のお力は素晴らしい! 疲れを全く感じませんでした……」
兵士さんたちは私に頭を下げる。
私は今は荷台じゃなくて、馬車の中にちゃんと座っている。
途中、兵士さんたちが疲れているようだったので祈ってあげたら元気になってくれて、感謝されて荷台から中に入れてもらえた。それから兵士さんたちは寝ずに馬を走らせてくれて、朝になったら国境に着いていた。
「こちらこそ、途中、美味しい食事をありがとうございました」
私は首を振ってから、頭を下げた。
途中で食事休憩をとったんだけど、兵士さんたちは、そのとき、干し肉の乗ったパンを食べさせてくれた。
――何年ぶりのお肉だったかわからないけど、それは口の中でとろけるようで、ちょっとしょっぱかったけど、すごく美味しかった……。
その前に食べたお肉は、私がもっと小さかったとき。
大司教様の部屋からすごくいい匂いがしたので、ふらふらと覗いたら机のお皿の上に見たこともない、赤っぽい大きな塊が置いてあって、思わずかぶりついたんだった。
それはいつも食べているのとは大違いの、体が満たされる味で、私は一気に全部食べてしまった。
そしたら『聖女が肉を食べるなんて!』ってすごく怒られて、それからしばらくご飯をもらえなかった……。
それからしばらく祈りの間に閉じ込められたから、あのお肉の味を思い出しながら過ごしたんだったっけ。
泣いていたせいか、思い出した味はちょっと塩辛かった……。
干し肉は、その時の塩辛さに似ていたけど、噛めば噛むほど味がして本当に美味しかった。
「ここで皆さんとは、お別れですよね……」
「――隣の国までお送りしますよ。国境を出ると魔物が出ますし――、エイダン様も『隣の国まで』とのご命令でしたので――」
兵士さんは、心配そうに言ってくれた。
けれど、私は「いいえ」と首を振った。
「これから先は自分でなんとかしていかないといけないですし。ここからは自分で行ってみます」
「それなら――、これをお持ちください」
兵士さんは、パンと干し肉と、丸い金色の塊をくれた。
「これなんですか?」
私がその金色の塊を見せると、兵士さんは目を丸くする。
「――金貨、ですが」
「ああ、これがお金なんですね」
今まで神殿の外に出たことがなかったので、話には聞いていても、実際に見る機会がなかった――。
ものを知らなくて恥ずかしいなぁ――。
顔が赤くなる気がして、私はうつむいた。
「――やっぱり、お送りします」
兵士さんたちは頷くと、また私を馬車に乗せて走り出した。
国境の壁のところで、私を運んでくれた兵士さんは、額の汗を拭いながら驚いた表情をした。
「聖女様のお力は素晴らしい! 疲れを全く感じませんでした……」
兵士さんたちは私に頭を下げる。
私は今は荷台じゃなくて、馬車の中にちゃんと座っている。
途中、兵士さんたちが疲れているようだったので祈ってあげたら元気になってくれて、感謝されて荷台から中に入れてもらえた。それから兵士さんたちは寝ずに馬を走らせてくれて、朝になったら国境に着いていた。
「こちらこそ、途中、美味しい食事をありがとうございました」
私は首を振ってから、頭を下げた。
途中で食事休憩をとったんだけど、兵士さんたちは、そのとき、干し肉の乗ったパンを食べさせてくれた。
――何年ぶりのお肉だったかわからないけど、それは口の中でとろけるようで、ちょっとしょっぱかったけど、すごく美味しかった……。
その前に食べたお肉は、私がもっと小さかったとき。
大司教様の部屋からすごくいい匂いがしたので、ふらふらと覗いたら机のお皿の上に見たこともない、赤っぽい大きな塊が置いてあって、思わずかぶりついたんだった。
それはいつも食べているのとは大違いの、体が満たされる味で、私は一気に全部食べてしまった。
そしたら『聖女が肉を食べるなんて!』ってすごく怒られて、それからしばらくご飯をもらえなかった……。
それからしばらく祈りの間に閉じ込められたから、あのお肉の味を思い出しながら過ごしたんだったっけ。
泣いていたせいか、思い出した味はちょっと塩辛かった……。
干し肉は、その時の塩辛さに似ていたけど、噛めば噛むほど味がして本当に美味しかった。
「ここで皆さんとは、お別れですよね……」
「――隣の国までお送りしますよ。国境を出ると魔物が出ますし――、エイダン様も『隣の国まで』とのご命令でしたので――」
兵士さんは、心配そうに言ってくれた。
けれど、私は「いいえ」と首を振った。
「これから先は自分でなんとかしていかないといけないですし。ここからは自分で行ってみます」
「それなら――、これをお持ちください」
兵士さんは、パンと干し肉と、丸い金色の塊をくれた。
「これなんですか?」
私がその金色の塊を見せると、兵士さんは目を丸くする。
「――金貨、ですが」
「ああ、これがお金なんですね」
今まで神殿の外に出たことがなかったので、話には聞いていても、実際に見る機会がなかった――。
ものを知らなくて恥ずかしいなぁ――。
顔が赤くなる気がして、私はうつむいた。
「――やっぱり、お送りします」
兵士さんたちは頷くと、また私を馬車に乗せて走り出した。
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