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8.元聖女はエルフの森に着きました。
第200話
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アイザックさんたちのお陰で、私たちは辺境地をさくさくと北上できた。
何日かしたところで、景色の先にすごく大きい木が立ち並ぶ森が見えてきました。
「あれがエルフの住む『悠久の森』だね」
私が額に手を置いて目を細めて森を見ていると、ステファンがそう言いました。
横でエドラさんも頷いてる。
――エルフの森に、ついに到着したんですね……!
思わず胸に手を置いた。
……ようやくお父さんに会えるかもしれない……。
「馬車は降りて、ここからは歩きだ」
アイザックさんは馬車から馬を外します。
私たちはぞろぞろと森の中に足を進めました。
「……あれ?」
森に入ってしばらくしてから、私は周囲をくるくると見回した。
普通の森の2倍くらいの高さがある木がびっしりと生えてる森の中は薄暗くて、すこし霧が立ち込めてる。気づいたら、右も左も後ろも前も同じような景色でどこから来たのか全くわからなくなってしまった。横で狼になっているライガが「臭いもよくわからねぇなぁ」と鼻を鳴らしている。
「……里の空間魔法の領域に入ったな」
エドラさんがおもむろに呟いた。
「空間魔法……」
「余所者が入り込めないように里を魔法で隔離しているんだ」
私の呟きに答えてくれたエドラさんはアイザックさんの肩を叩いた。
「父親から預かった石を出して魔力を加えてみろ」
アイザックさんが「わかりました」と取り出した、ステファンのお父さんから預かった傷がたくさんついた青い石が、ぴかーっと光り出した。石から青い文字が浮かび上がって、表面に刻まれた傷が消えて行く。空中に浮かんだ文字の中から青い両手の平くらいの大きさの水の塊がぶくぶくと膨らんで、両掌くらいの大きさの、髪の長い女の人のような形になった。
「実体化した水の精霊だな」
ザァァァと水の精霊が動く音がして、その塊は空中を流れるように飛んで行った。
「精霊が里まで案内してくれる、後を追え」
エドラさんに言われて、私たちはその水の塊が向かう方へと進んでいった。
けっこう進むのが早いその後を駆け足でついていく。どれくらい歩いたかわからなくなって息を切らしはじめたとき、不意に視界が開けた。
水の精霊は、ぱんっと音を立てて空中に散って姿が見えなくなった。
そして目の前には、大きい木が左右に道のように立っていて、その間に色とりどりの花が咲き乱れている不思議な場所が広がっていた。
「——全く変わっていないな」
私たちが目をぱちぱちしながら周囲を見回している中、エドラさんはそう呟いて1人花が咲いている方へ足を踏み入れた。
その時、ヒュッと何かが空を切る音がした。
エドラさんは杖を振る。風が巻き起こって、私の足元に矢が数本落ちた。
……矢!?
「――――お前は……“悪食”のエドラヒルか?」
上から声がしたので見上げると、木のずっと上から、みんな綺麗な長い髪の毛から、長い耳が出ているエルフの人たちが数人私たちを見下ろしていた。その中のまとめ役のような、金髪の――たぶん男の人が、すたっと木の上から私たちの前に飛び降りる。
「そうだ。里帰りだ」
エドラさんは肩を持ち上げると、ぶっきらぼうにそう答えた。
「相変わらず常識知らずな……。名乗らず立ち入る奴があるか……」
それからその人は私たちを見て顔をしかめた。
「人間……? いや……その小さい娘は……」
……うわぁ、何だかひしひしと視線を感じます……。
私のこと見てますよね……。
気まずくなって身体を小さくしていると、エドラさんのやり取りに痺れを切らしたようにステファンが前に出た。
「アスガルド辺境伯、マーゼンスの息子、ステファンと申します。父が昔、あなた方よりいただいたという石を頼りにやって参りました」
「……マーゼンス……、あぁ、“鬼殺し”の息子か……」
ぴくりと眉を動かして、その金髪のエルフさんはステファンを見た。
「何か困りごとがあったときは我々も協力させてもらうと、確かにそのようなものを族長が渡したような記憶はあるが……、何事か」
ステファンは私の肩に手を置いた。
「彼女の父親のエルフがこの里にいるかと思います。――それを訪ねてやって参りました。僕たちはその立ち合い人として一緒についてきた次第です」
「…………魔族…………」
金髪のエルフさんは私に向かって呟いた。
えぇ……、確実に睨まれてます……。
明らかに敵意しか感じません……。
怖くて視線を返すことはできなかった。
「見ての通り、エルフと魔族が交ざった娘だ。父親がわかるか?」
エドラさんが腕組みをしたまま問いかける。
「――――マイグリンに娘がいたとは――」
『マイグリン』? それがお父さんの名前でしょうか?
金髪のエルフさんはそう呟くと、私たちに呼びかけた。
「族長との謁見の場を設ける。ついてきなさい」
何日かしたところで、景色の先にすごく大きい木が立ち並ぶ森が見えてきました。
「あれがエルフの住む『悠久の森』だね」
私が額に手を置いて目を細めて森を見ていると、ステファンがそう言いました。
横でエドラさんも頷いてる。
――エルフの森に、ついに到着したんですね……!
思わず胸に手を置いた。
……ようやくお父さんに会えるかもしれない……。
「馬車は降りて、ここからは歩きだ」
アイザックさんは馬車から馬を外します。
私たちはぞろぞろと森の中に足を進めました。
「……あれ?」
森に入ってしばらくしてから、私は周囲をくるくると見回した。
普通の森の2倍くらいの高さがある木がびっしりと生えてる森の中は薄暗くて、すこし霧が立ち込めてる。気づいたら、右も左も後ろも前も同じような景色でどこから来たのか全くわからなくなってしまった。横で狼になっているライガが「臭いもよくわからねぇなぁ」と鼻を鳴らしている。
「……里の空間魔法の領域に入ったな」
エドラさんがおもむろに呟いた。
「空間魔法……」
「余所者が入り込めないように里を魔法で隔離しているんだ」
私の呟きに答えてくれたエドラさんはアイザックさんの肩を叩いた。
「父親から預かった石を出して魔力を加えてみろ」
アイザックさんが「わかりました」と取り出した、ステファンのお父さんから預かった傷がたくさんついた青い石が、ぴかーっと光り出した。石から青い文字が浮かび上がって、表面に刻まれた傷が消えて行く。空中に浮かんだ文字の中から青い両手の平くらいの大きさの水の塊がぶくぶくと膨らんで、両掌くらいの大きさの、髪の長い女の人のような形になった。
「実体化した水の精霊だな」
ザァァァと水の精霊が動く音がして、その塊は空中を流れるように飛んで行った。
「精霊が里まで案内してくれる、後を追え」
エドラさんに言われて、私たちはその水の塊が向かう方へと進んでいった。
けっこう進むのが早いその後を駆け足でついていく。どれくらい歩いたかわからなくなって息を切らしはじめたとき、不意に視界が開けた。
水の精霊は、ぱんっと音を立てて空中に散って姿が見えなくなった。
そして目の前には、大きい木が左右に道のように立っていて、その間に色とりどりの花が咲き乱れている不思議な場所が広がっていた。
「——全く変わっていないな」
私たちが目をぱちぱちしながら周囲を見回している中、エドラさんはそう呟いて1人花が咲いている方へ足を踏み入れた。
その時、ヒュッと何かが空を切る音がした。
エドラさんは杖を振る。風が巻き起こって、私の足元に矢が数本落ちた。
……矢!?
「――――お前は……“悪食”のエドラヒルか?」
上から声がしたので見上げると、木のずっと上から、みんな綺麗な長い髪の毛から、長い耳が出ているエルフの人たちが数人私たちを見下ろしていた。その中のまとめ役のような、金髪の――たぶん男の人が、すたっと木の上から私たちの前に飛び降りる。
「そうだ。里帰りだ」
エドラさんは肩を持ち上げると、ぶっきらぼうにそう答えた。
「相変わらず常識知らずな……。名乗らず立ち入る奴があるか……」
それからその人は私たちを見て顔をしかめた。
「人間……? いや……その小さい娘は……」
……うわぁ、何だかひしひしと視線を感じます……。
私のこと見てますよね……。
気まずくなって身体を小さくしていると、エドラさんのやり取りに痺れを切らしたようにステファンが前に出た。
「アスガルド辺境伯、マーゼンスの息子、ステファンと申します。父が昔、あなた方よりいただいたという石を頼りにやって参りました」
「……マーゼンス……、あぁ、“鬼殺し”の息子か……」
ぴくりと眉を動かして、その金髪のエルフさんはステファンを見た。
「何か困りごとがあったときは我々も協力させてもらうと、確かにそのようなものを族長が渡したような記憶はあるが……、何事か」
ステファンは私の肩に手を置いた。
「彼女の父親のエルフがこの里にいるかと思います。――それを訪ねてやって参りました。僕たちはその立ち合い人として一緒についてきた次第です」
「…………魔族…………」
金髪のエルフさんは私に向かって呟いた。
えぇ……、確実に睨まれてます……。
明らかに敵意しか感じません……。
怖くて視線を返すことはできなかった。
「見ての通り、エルフと魔族が交ざった娘だ。父親がわかるか?」
エドラさんが腕組みをしたまま問いかける。
「――――マイグリンに娘がいたとは――」
『マイグリン』? それがお父さんの名前でしょうか?
金髪のエルフさんはそう呟くと、私たちに呼びかけた。
「族長との謁見の場を設ける。ついてきなさい」
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