【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん

文字の大きさ
202 / 217
8.元聖女はエルフの森に着きました。

第200話

しおりを挟む
 アイザックさんたちのお陰で、私たちは辺境地をさくさくと北上できた。
 何日かしたところで、景色の先にすごく大きい木が立ち並ぶ森が見えてきました。

「あれがエルフの住む『悠久の森』だね」

 私が額に手を置いて目を細めて森を見ていると、ステファンがそう言いました。
 横でエドラさんも頷いてる。
 
 ――エルフの森に、ついに到着したんですね……!

 思わず胸に手を置いた。
 ……ようやくお父さんに会えるかもしれない……。

「馬車は降りて、ここからは歩きだ」

 アイザックさんは馬車から馬を外します。
 私たちはぞろぞろと森の中に足を進めました。

「……あれ?」

 森に入ってしばらくしてから、私は周囲をくるくると見回した。
 普通の森の2倍くらいの高さがある木がびっしりと生えてる森の中は薄暗くて、すこし霧が立ち込めてる。気づいたら、右も左も後ろも前も同じような景色でどこから来たのか全くわからなくなってしまった。横で狼になっているライガが「臭いもよくわからねぇなぁ」と鼻を鳴らしている。

「……里の空間魔法の領域に入ったな」

 エドラさんがおもむろに呟いた。

「空間魔法……」

「余所者が入り込めないように里を魔法で隔離しているんだ」

 私の呟きに答えてくれたエドラさんはアイザックさんの肩を叩いた。

「父親から預かった石を出して魔力を加えてみろ」

 アイザックさんが「わかりました」と取り出した、ステファンのお父さんから預かった傷がたくさんついた青い石が、ぴかーっと光り出した。石から青い文字が浮かび上がって、表面に刻まれた傷が消えて行く。空中に浮かんだ文字の中から青い両手の平くらいの大きさの水の塊がぶくぶくと膨らんで、両掌くらいの大きさの、髪の長い女の人のような形になった。

「実体化した水の精霊ウンディーネだな」

 ザァァァと水の精霊が動く音がして、その塊は空中を流れるように飛んで行った。

「精霊が里まで案内してくれる、後を追え」

 エドラさんに言われて、私たちはその水の塊が向かう方へと進んでいった。
 けっこう進むのが早いその後を駆け足でついていく。どれくらい歩いたかわからなくなって息を切らしはじめたとき、不意に視界が開けた。

 水の精霊は、ぱんっと音を立てて空中に散って姿が見えなくなった。
 そして目の前には、大きい木が左右に道のように立っていて、その間に色とりどりの花が咲き乱れている不思議な場所が広がっていた。

「——全く変わっていないな」

 私たちが目をぱちぱちしながら周囲を見回している中、エドラさんはそう呟いて1人花が咲いている方へ足を踏み入れた。

 その時、ヒュッと何かが空を切る音がした。
 エドラさんは杖を振る。風が巻き起こって、私の足元に矢が数本落ちた。
 ……矢!? 

「――――お前は……“悪食あくじき”のエドラヒルか?」

 上から声がしたので見上げると、木のずっと上から、みんな綺麗な長い髪の毛から、長い耳が出ているエルフの人たちが数人私たちを見下ろしていた。その中のまとめ役のような、金髪の――たぶん男の人が、すたっと木の上から私たちの前に飛び降りる。

「そうだ。里帰りだ」

 エドラさんは肩を持ち上げると、ぶっきらぼうにそう答えた。

「相変わらず常識知らずな……。名乗らず立ち入る奴があるか……」

 それからその人は私たちを見て顔をしかめた。

「人間……? いや……その小さい娘は……」

 ……うわぁ、何だかひしひしと視線を感じます……。
 私のこと見てますよね……。
 気まずくなって身体を小さくしていると、エドラさんのやり取りに痺れを切らしたようにステファンが前に出た。

「アスガルド辺境伯、マーゼンスの息子、ステファンと申します。父が昔、あなた方よりいただいたという石を頼りにやって参りました」

「……マーゼンス……、あぁ、“鬼殺しオーガキラー”の息子か……」

 ぴくりと眉を動かして、その金髪のエルフさんはステファンを見た。

「何か困りごとがあったときは我々も協力させてもらうと、確かにそのようなものを族長が渡したような記憶はあるが……、何事か」

 ステファンは私の肩に手を置いた。

「彼女の父親のエルフがこの里にいるかと思います。――それを訪ねてやって参りました。僕たちはその立ち合い人として一緒についてきた次第です」

「…………魔族…………」

 金髪のエルフさんは私に向かって呟いた。
 えぇ……、確実に睨まれてます……。
 明らかに敵意しか感じません……。

 怖くて視線を返すことはできなかった。

「見ての通り、エルフと魔族が交ざった娘だ。父親がわかるか?」

 エドラさんが腕組みをしたまま問いかける。

「――――マイグリンに娘がいたとは――」

 『マイグリン』? それがお父さんの名前でしょうか?

 金髪のエルフさんはそう呟くと、私たちに呼びかけた。

「族長との謁見の場を設ける。ついてきなさい」
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。 「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」 周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。 アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。 ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。 その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。 そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。

処理中です...