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4.元聖女を追い出した元王子が謝罪に来ました。
91.
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「よし、じゃあ、ちょっと可哀そうだけど、こいつを餌にするか」
ステファンは籠に入った鶏を川の傍に近づけた。
すぐにスライムが出てきて、するりと籠の隙間から中に侵入し、鶏に飛び掛かった。
コケ! コケコッコー!
鶏はけたたましく鳴いて、白い羽を周囲に散らした。
ステファンはそれを堀の真ん中の高く残したところに置くと、私たちを近くの草藪へ退がらせた。
息を潜めて河原を見つめる。
――すると、うにょうにょと、透明な塊が押し寄せるように――鳥籠の中ので暴れている鶏目掛けて押し寄せた。そしてそのスライムの大群は、そのまま流れ込むように穴に落ちた。
「まとめて火をつけるから見てて」
ステファンはエイダン様に声をかけると、リュックから瓶を取り出して、左手に瓶、右手に松明を持って穴の方へ向かった。穴の中に瓶の中の液体を振りかけて松明で火をつける。
ぼう! と火柱が上がった。近づくと、堀の中でスライムたちが燃えて溶けて水たまりを作っていた。
一部がうにうにそこから逃れるようにこっちに向かってきた。逃げようと必死なのか、移動速度が速い。さっきみたいに身体によじ登られたら気持ち悪いっ……。大人しくして、こっちに来ないで……。
私は手を組んで目を瞑ると、祈った。
「――逃げたのは頼むって……言う必要なかったか」
ステファンの声で目を開けると、逃げたスライムは途中で力を失って動かなくなっていた。
はぁ、と息を吐いて一匹ずつ落ち着いて火で溶かす。
最後にまだ暴れてる鶏を私が祈って無気力状態にさせた。ステファンが口ばしから木の枝を入れて、鶏の口の中に入っていたスライムを取り出して火で焼く。
「後は、核の回収だな」
ライガが穴の中に溜まったスライムの核をシャベルで外に放り出すので、私たちはそれを袋の中に回収する。
スライムの核は白っぽい歪な形の塊だったけど、中にはてかてか白く綺麗に輝いてるのがあった。
「これ綺麗ですねえ」
私がそれをつまみ上げて見せると、ステファンが「ラッキーだね」と笑った。
「スライム真珠だよ。たまにあるんだ。高く売れる」
「本当ですか! やったぁ」
私は嬉しくなってそれを日差しに掲げた。
***
数か所で同じようにスライム退治を終えて、私たちは最初に焚火をしたところに戻ってきて腰を下ろした。
太陽はもう高く昇りきっていて、お腹が減っていた。
「昼、食べようぜ」とライガが荷物をごそごそし出した。
「エイダンは食べないのか」
私たちが焚火で干し肉を焼き直して野菜と一緒にパンにはさんで食べている横で、エイダン様は自分の荷物からノートを出して、何か熱心に書き留めている。
「ああ……もう少し……忘れないうちにまとめてから食べる……」
……何を書いているんでしょう。
覗き込むと、『スライムの倒し方』というタイトルと、図が書き込まれていた。
たぶん鳥っぽい絵も書いてある。
「エイダン様……これ、鶏ですか?」
聞くと、エイダン様はがばっとノートを閉じてしまった。
「鶏以外に何に見える」
「いえ……、鶏ですね」
不機嫌そうに睨まれたので、とりあえず微笑んでおいた。
「――――本当に、やる気はあるんだね」
ステファンはそう呟くと、自分の荷物の中から一冊の分厚い本みたいのを出して、エイダン様の前に置いた。
「何だこれは?」
エイダン様はぱらぱらとそのページをめくる。
私も横から覗き込んだ。
『スライム』『小鬼』『蛇竜』『魔法草』……。いろんな魔物の特徴や退治方法が上手な絵と一緒に細かく手書きで記載されていた。
「すごいな」
「すごいですねぇ」
私とエイダン様の声が重なる。ステファンは少し照れたように呟いた。
「貸すよ。僕のメモだけど。写すなり、自由にしていいよ」
「えええ、これ、ステファンが書いたんですか!」
こんなの持ってるなんて今まで知らなかった。むしろ私が読みたいんですけど……。面白そう。
ステファンは籠に入った鶏を川の傍に近づけた。
すぐにスライムが出てきて、するりと籠の隙間から中に侵入し、鶏に飛び掛かった。
コケ! コケコッコー!
鶏はけたたましく鳴いて、白い羽を周囲に散らした。
ステファンはそれを堀の真ん中の高く残したところに置くと、私たちを近くの草藪へ退がらせた。
息を潜めて河原を見つめる。
――すると、うにょうにょと、透明な塊が押し寄せるように――鳥籠の中ので暴れている鶏目掛けて押し寄せた。そしてそのスライムの大群は、そのまま流れ込むように穴に落ちた。
「まとめて火をつけるから見てて」
ステファンはエイダン様に声をかけると、リュックから瓶を取り出して、左手に瓶、右手に松明を持って穴の方へ向かった。穴の中に瓶の中の液体を振りかけて松明で火をつける。
ぼう! と火柱が上がった。近づくと、堀の中でスライムたちが燃えて溶けて水たまりを作っていた。
一部がうにうにそこから逃れるようにこっちに向かってきた。逃げようと必死なのか、移動速度が速い。さっきみたいに身体によじ登られたら気持ち悪いっ……。大人しくして、こっちに来ないで……。
私は手を組んで目を瞑ると、祈った。
「――逃げたのは頼むって……言う必要なかったか」
ステファンの声で目を開けると、逃げたスライムは途中で力を失って動かなくなっていた。
はぁ、と息を吐いて一匹ずつ落ち着いて火で溶かす。
最後にまだ暴れてる鶏を私が祈って無気力状態にさせた。ステファンが口ばしから木の枝を入れて、鶏の口の中に入っていたスライムを取り出して火で焼く。
「後は、核の回収だな」
ライガが穴の中に溜まったスライムの核をシャベルで外に放り出すので、私たちはそれを袋の中に回収する。
スライムの核は白っぽい歪な形の塊だったけど、中にはてかてか白く綺麗に輝いてるのがあった。
「これ綺麗ですねえ」
私がそれをつまみ上げて見せると、ステファンが「ラッキーだね」と笑った。
「スライム真珠だよ。たまにあるんだ。高く売れる」
「本当ですか! やったぁ」
私は嬉しくなってそれを日差しに掲げた。
***
数か所で同じようにスライム退治を終えて、私たちは最初に焚火をしたところに戻ってきて腰を下ろした。
太陽はもう高く昇りきっていて、お腹が減っていた。
「昼、食べようぜ」とライガが荷物をごそごそし出した。
「エイダンは食べないのか」
私たちが焚火で干し肉を焼き直して野菜と一緒にパンにはさんで食べている横で、エイダン様は自分の荷物からノートを出して、何か熱心に書き留めている。
「ああ……もう少し……忘れないうちにまとめてから食べる……」
……何を書いているんでしょう。
覗き込むと、『スライムの倒し方』というタイトルと、図が書き込まれていた。
たぶん鳥っぽい絵も書いてある。
「エイダン様……これ、鶏ですか?」
聞くと、エイダン様はがばっとノートを閉じてしまった。
「鶏以外に何に見える」
「いえ……、鶏ですね」
不機嫌そうに睨まれたので、とりあえず微笑んでおいた。
「――――本当に、やる気はあるんだね」
ステファンはそう呟くと、自分の荷物の中から一冊の分厚い本みたいのを出して、エイダン様の前に置いた。
「何だこれは?」
エイダン様はぱらぱらとそのページをめくる。
私も横から覗き込んだ。
『スライム』『小鬼』『蛇竜』『魔法草』……。いろんな魔物の特徴や退治方法が上手な絵と一緒に細かく手書きで記載されていた。
「すごいな」
「すごいですねぇ」
私とエイダン様の声が重なる。ステファンは少し照れたように呟いた。
「貸すよ。僕のメモだけど。写すなり、自由にしていいよ」
「えええ、これ、ステファンが書いたんですか!」
こんなの持ってるなんて今まで知らなかった。むしろ私が読みたいんですけど……。面白そう。
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