11 / 22
【interlude】メイド少女は推しを推したい 5
しおりを挟む
「ファナティアス様、ティアラはわたくしがお預かりして獣人の国に戻りましたら、信用のおけるところにリフォームさせます。よろしいでしょうか?」
「まあ、ありがとう。お願いします」
ファナが了承してくれたので、胸ポケットから白いハンカチを取りだし、丁寧に包む。
「あの、カミルちゃん? ……あ、カミルちゃんって呼んでも良いかしら?」
推しに上目でそう問われて、
(ぐう゛)
カミルは心の中で呻いた。
「……もちろんです。ファナティアス様のお好きなようにお呼びください」
「じゃあ、カミルちゃん! もう一つお願いがあるのだけれど――……」
「なんなりとお申し付けください」
「『ファナ』って呼んで欲しいわ。できれば敬称もいらないのだけれど……」
「そ、それは、わたくしには立場がございますので」
「そうよね、そうよね、ごめんなさい……」
「……ファナ様」
カミルがメイドとしての自分が許されるであろう呼び方をすると、ファナは顔を輝かせて笑った。
「ありがとうカミルちゃん!」
そんなやりとりをしているうちに、大公に命じられたのであろう城のメイドがドレスを持って来た。
だがそれはとてもそのままでは着られないような代物だった。
ファナにはサイズが大きいし、しかもリボンとフリルがこれでもかと付いている。
(色は素敵なのに……)
淡いピンクの混じった薄いグレーで、裾には繊細なレースがほどこされていた。
「身頃を少し詰めれば着られそうね」
カミルと一緒にドレスを見ていたファナが言う。
「そうですね。それにできればリボンを二つ三つ取った方が……」
「そうね。これはちょっと……デコラティブすぎるものね」
気遣いを感じさせる言い回しだった。
「おまかせください、ファナ様。わたくし裁縫は両親に叩き込まれていますので!」
力強く宣言すると、ファナはにこにこする。
「まあ、頼もしいわ。私も少しはお役に立てると思うから、お手伝いさせてちょうだいね」
実際、ファナの裁縫の腕は中々のものだった。
「必要に駆られて身に付いたものだけれど、こうして役に立って嬉しいわ」
それに、とファナは少しはにかんで言った。
「誰かと一緒にお針仕事をするのって、楽しいわね」
推しにそう言われて悪い気はしない。
カミルは益々、この人に素敵なドレスを着て欲しいと思った。
夕方から明け方まで二人がかりで作業して、なんとかドレスは見られる代物になった。
リボンを全て外したことで、裾の繊細なレースが際立つシンプルで品の良い物に生まれ変わったのだ。
元々質は良かったし、
(何よりあたしの推しは誰より綺麗だもの!)
ファナが着れば百万倍輝いて見えるわ、とカミルは独りごちた。
さて、残り時間はあと十二時間ほど。
ファナに仮眠を取らせてから、カミルは一人鏡台の前に自分のメイク道具を並べてみた。
(薄化粧で良いでしょうし、これで何とかなると思うけれど……)
自分の安物の化粧品でファナのすべすべの肌が荒れなければいいのだが、と案ずる。
(後はアクセサリーと髪の毛だけど――……)
実はカミルにはアクセサリーの当てがあった。
だが、それを催促するのはさすがにデリカシーに欠ける気がして出来ないのだ。
(ヘアスタイルはどうしようかしら……)
考えているうちにファナが起きた。
目を擦りつつ身を起こす彼女に、カミルは言う。
「ファナ様、わたくしちょっとお庭へ行ってきますわ」
獣人の国では、若い娘達は好んで生花を胸元や髪に飾る。
それを伝えると、ファナは頷いた。
「本で読んだことがあるわ。素敵ね」
「ファナ様の髪も、編みこみにして花を飾ったらどうかと思いまして」
「まあ、ぜひやってみたいわ」
二人は揃って城の前庭へと出た。
「まあ、ありがとう。お願いします」
ファナが了承してくれたので、胸ポケットから白いハンカチを取りだし、丁寧に包む。
「あの、カミルちゃん? ……あ、カミルちゃんって呼んでも良いかしら?」
推しに上目でそう問われて、
(ぐう゛)
カミルは心の中で呻いた。
「……もちろんです。ファナティアス様のお好きなようにお呼びください」
「じゃあ、カミルちゃん! もう一つお願いがあるのだけれど――……」
「なんなりとお申し付けください」
「『ファナ』って呼んで欲しいわ。できれば敬称もいらないのだけれど……」
「そ、それは、わたくしには立場がございますので」
「そうよね、そうよね、ごめんなさい……」
「……ファナ様」
カミルがメイドとしての自分が許されるであろう呼び方をすると、ファナは顔を輝かせて笑った。
「ありがとうカミルちゃん!」
そんなやりとりをしているうちに、大公に命じられたのであろう城のメイドがドレスを持って来た。
だがそれはとてもそのままでは着られないような代物だった。
ファナにはサイズが大きいし、しかもリボンとフリルがこれでもかと付いている。
(色は素敵なのに……)
淡いピンクの混じった薄いグレーで、裾には繊細なレースがほどこされていた。
「身頃を少し詰めれば着られそうね」
カミルと一緒にドレスを見ていたファナが言う。
「そうですね。それにできればリボンを二つ三つ取った方が……」
「そうね。これはちょっと……デコラティブすぎるものね」
気遣いを感じさせる言い回しだった。
「おまかせください、ファナ様。わたくし裁縫は両親に叩き込まれていますので!」
力強く宣言すると、ファナはにこにこする。
「まあ、頼もしいわ。私も少しはお役に立てると思うから、お手伝いさせてちょうだいね」
実際、ファナの裁縫の腕は中々のものだった。
「必要に駆られて身に付いたものだけれど、こうして役に立って嬉しいわ」
それに、とファナは少しはにかんで言った。
「誰かと一緒にお針仕事をするのって、楽しいわね」
推しにそう言われて悪い気はしない。
カミルは益々、この人に素敵なドレスを着て欲しいと思った。
夕方から明け方まで二人がかりで作業して、なんとかドレスは見られる代物になった。
リボンを全て外したことで、裾の繊細なレースが際立つシンプルで品の良い物に生まれ変わったのだ。
元々質は良かったし、
(何よりあたしの推しは誰より綺麗だもの!)
ファナが着れば百万倍輝いて見えるわ、とカミルは独りごちた。
さて、残り時間はあと十二時間ほど。
ファナに仮眠を取らせてから、カミルは一人鏡台の前に自分のメイク道具を並べてみた。
(薄化粧で良いでしょうし、これで何とかなると思うけれど……)
自分の安物の化粧品でファナのすべすべの肌が荒れなければいいのだが、と案ずる。
(後はアクセサリーと髪の毛だけど――……)
実はカミルにはアクセサリーの当てがあった。
だが、それを催促するのはさすがにデリカシーに欠ける気がして出来ないのだ。
(ヘアスタイルはどうしようかしら……)
考えているうちにファナが起きた。
目を擦りつつ身を起こす彼女に、カミルは言う。
「ファナ様、わたくしちょっとお庭へ行ってきますわ」
獣人の国では、若い娘達は好んで生花を胸元や髪に飾る。
それを伝えると、ファナは頷いた。
「本で読んだことがあるわ。素敵ね」
「ファナ様の髪も、編みこみにして花を飾ったらどうかと思いまして」
「まあ、ぜひやってみたいわ」
二人は揃って城の前庭へと出た。
13
あなたにおすすめの小説
愛しいあなたは竜の番
さくたろう
恋愛
前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。
16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。
竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。
※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。
※全58話、一気に更新します。ご了承ください。
政略結婚のはずでしたが、黒の公爵に「君を愛するつもりしかない」と言われました。
ちよこ
恋愛
没落寸前のエーデル伯爵家の令嬢ルイーズは、この国最大の権勢を誇る黒の公爵エルハルトと政略婚を結ぶことになった。
釣り合わない縁談に社交界はざわめいたが、ルイーズは「家同士の利害が一致した取引に過ぎない」と割り切っていた。
ところが初夜、公爵は開口一番こう言った。
「私は君を愛するつもりしかない」
政略婚のつもりでいた令嬢と、最初から決めていた公爵の、少し不器用な初夜の話。
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
愛のない白い結婚や契約結婚を疑っていた私が、完璧な夫と「本当の意味で」結ばれるまでのお話
ぜんだ 夕里
恋愛
しがない子爵令嬢のイヴが政略結婚で嫁いだのは、誰もが憧れる完璧な大公爵アダマン様。
しかし彼は、お世継ぎはコウノトリが運んでくると本気で信じている、とてつもなく純粋な人だった!
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く
禅
恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。
だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。
しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。
こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは……
※完結まで毎日投稿します
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
花瀬ゆらぎ
恋愛
囚われた弟を救うため、貧民育ちのリーゼは公爵令嬢になりすまし、騎士団長シルヴィオに嫁いだ。
彼女に与えられた任務は、夫を監視すること。
結婚後、新居で待っていたのは、「氷の騎士」と恐れられる無口な夫。
しかし──戦地から帰還した彼は、別人のようにリーゼを溺愛し始めて……!?
「あなたのことを考えない日は一日たりともなかった」
次第にシルヴィオに惹かれていくリーゼ。けれど彼女は知らない。この結婚には、さらなる罠が仕掛けられていることを。
守り守られ真の夫婦を目指す恋愛ファンタジー!
※ヒロインが実家で虐げられるシリアスな展開がありますが、ヒーローによる救済・溺愛へと繋がります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる