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【interlude】メイド少女は推しを推したい 5
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「ファナティアス様、ティアラはわたくしがお預かりして獣人の国に戻りましたら、信用のおけるところにリフォームさせます。よろしいでしょうか?」
「まあ、ありがとう。お願いします」
ファナが了承してくれたので、胸ポケットから白いハンカチを取りだし、丁寧に包む。
「あの、カミルちゃん? ……あ、カミルちゃんって呼んでも良いかしら?」
推しに上目でそう問われて、
(ぐう゛)
カミルは心の中で呻いた。
「……もちろんです。ファナティアス様のお好きなようにお呼びください」
「じゃあ、カミルちゃん! もう一つお願いがあるのだけれど――……」
「なんなりとお申し付けください」
「『ファナ』って呼んで欲しいわ。できれば敬称もいらないのだけれど……」
「そ、それは、わたくしには立場がございますので」
「そうよね、そうよね、ごめんなさい……」
「……ファナ様」
カミルがメイドとしての自分が許されるであろう呼び方をすると、ファナは顔を輝かせて笑った。
「ありがとうカミルちゃん!」
そんなやりとりをしているうちに、大公に命じられたのであろう城のメイドがドレスを持って来た。
だがそれはとてもそのままでは着られないような代物だった。
ファナにはサイズが大きいし、しかもリボンとフリルがこれでもかと付いている。
(色は素敵なのに……)
淡いピンクの混じった薄いグレーで、裾には繊細なレースがほどこされていた。
「身頃を少し詰めれば着られそうね」
カミルと一緒にドレスを見ていたファナが言う。
「そうですね。それにできればリボンを二つ三つ取った方が……」
「そうね。これはちょっと……デコラティブすぎるものね」
気遣いを感じさせる言い回しだった。
「おまかせください、ファナ様。わたくし裁縫は両親に叩き込まれていますので!」
力強く宣言すると、ファナはにこにこする。
「まあ、頼もしいわ。私も少しはお役に立てると思うから、お手伝いさせてちょうだいね」
実際、ファナの裁縫の腕は中々のものだった。
「必要に駆られて身に付いたものだけれど、こうして役に立って嬉しいわ」
それに、とファナは少しはにかんで言った。
「誰かと一緒にお針仕事をするのって、楽しいわね」
推しにそう言われて悪い気はしない。
カミルは益々、この人に素敵なドレスを着て欲しいと思った。
夕方から明け方まで二人がかりで作業して、なんとかドレスは見られる代物になった。
リボンを全て外したことで、裾の繊細なレースが際立つシンプルで品の良い物に生まれ変わったのだ。
元々質は良かったし、
(何よりあたしの推しは誰より綺麗だもの!)
ファナが着れば百万倍輝いて見えるわ、とカミルは独りごちた。
さて、残り時間はあと十二時間ほど。
ファナに仮眠を取らせてから、カミルは一人鏡台の前に自分のメイク道具を並べてみた。
(薄化粧で良いでしょうし、これで何とかなると思うけれど……)
自分の安物の化粧品でファナのすべすべの肌が荒れなければいいのだが、と案ずる。
(後はアクセサリーと髪の毛だけど――……)
実はカミルにはアクセサリーの当てがあった。
だが、それを催促するのはさすがにデリカシーに欠ける気がして出来ないのだ。
(ヘアスタイルはどうしようかしら……)
考えているうちにファナが起きた。
目を擦りつつ身を起こす彼女に、カミルは言う。
「ファナ様、わたくしちょっとお庭へ行ってきますわ」
獣人の国では、若い娘達は好んで生花を胸元や髪に飾る。
それを伝えると、ファナは頷いた。
「本で読んだことがあるわ。素敵ね」
「ファナ様の髪も、編みこみにして花を飾ったらどうかと思いまして」
「まあ、ぜひやってみたいわ」
二人は揃って城の前庭へと出た。
「まあ、ありがとう。お願いします」
ファナが了承してくれたので、胸ポケットから白いハンカチを取りだし、丁寧に包む。
「あの、カミルちゃん? ……あ、カミルちゃんって呼んでも良いかしら?」
推しに上目でそう問われて、
(ぐう゛)
カミルは心の中で呻いた。
「……もちろんです。ファナティアス様のお好きなようにお呼びください」
「じゃあ、カミルちゃん! もう一つお願いがあるのだけれど――……」
「なんなりとお申し付けください」
「『ファナ』って呼んで欲しいわ。できれば敬称もいらないのだけれど……」
「そ、それは、わたくしには立場がございますので」
「そうよね、そうよね、ごめんなさい……」
「……ファナ様」
カミルがメイドとしての自分が許されるであろう呼び方をすると、ファナは顔を輝かせて笑った。
「ありがとうカミルちゃん!」
そんなやりとりをしているうちに、大公に命じられたのであろう城のメイドがドレスを持って来た。
だがそれはとてもそのままでは着られないような代物だった。
ファナにはサイズが大きいし、しかもリボンとフリルがこれでもかと付いている。
(色は素敵なのに……)
淡いピンクの混じった薄いグレーで、裾には繊細なレースがほどこされていた。
「身頃を少し詰めれば着られそうね」
カミルと一緒にドレスを見ていたファナが言う。
「そうですね。それにできればリボンを二つ三つ取った方が……」
「そうね。これはちょっと……デコラティブすぎるものね」
気遣いを感じさせる言い回しだった。
「おまかせください、ファナ様。わたくし裁縫は両親に叩き込まれていますので!」
力強く宣言すると、ファナはにこにこする。
「まあ、頼もしいわ。私も少しはお役に立てると思うから、お手伝いさせてちょうだいね」
実際、ファナの裁縫の腕は中々のものだった。
「必要に駆られて身に付いたものだけれど、こうして役に立って嬉しいわ」
それに、とファナは少しはにかんで言った。
「誰かと一緒にお針仕事をするのって、楽しいわね」
推しにそう言われて悪い気はしない。
カミルは益々、この人に素敵なドレスを着て欲しいと思った。
夕方から明け方まで二人がかりで作業して、なんとかドレスは見られる代物になった。
リボンを全て外したことで、裾の繊細なレースが際立つシンプルで品の良い物に生まれ変わったのだ。
元々質は良かったし、
(何よりあたしの推しは誰より綺麗だもの!)
ファナが着れば百万倍輝いて見えるわ、とカミルは独りごちた。
さて、残り時間はあと十二時間ほど。
ファナに仮眠を取らせてから、カミルは一人鏡台の前に自分のメイク道具を並べてみた。
(薄化粧で良いでしょうし、これで何とかなると思うけれど……)
自分の安物の化粧品でファナのすべすべの肌が荒れなければいいのだが、と案ずる。
(後はアクセサリーと髪の毛だけど――……)
実はカミルにはアクセサリーの当てがあった。
だが、それを催促するのはさすがにデリカシーに欠ける気がして出来ないのだ。
(ヘアスタイルはどうしようかしら……)
考えているうちにファナが起きた。
目を擦りつつ身を起こす彼女に、カミルは言う。
「ファナ様、わたくしちょっとお庭へ行ってきますわ」
獣人の国では、若い娘達は好んで生花を胸元や髪に飾る。
それを伝えると、ファナは頷いた。
「本で読んだことがあるわ。素敵ね」
「ファナ様の髪も、編みこみにして花を飾ったらどうかと思いまして」
「まあ、ぜひやってみたいわ」
二人は揃って城の前庭へと出た。
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