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かけがえのない友人 *sideラシェル④
しおりを挟む騒がしく異物でしかなかった義母たちが連れて行かれ、侯爵と自分たちだけが残る。
はぁ、と大きく息を吐き出したアンドリューが真意を測るようまっすぐに侯爵を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「それでどのような処罰をされるわけで? 他家のことに口を出したくはありませんが、ラシェルは私の側近なので。彼を長い間虐げてきた彼女たちにはそれ相応の罰を願いたいところです」
「わかっております。お手を煩わせて申し訳ありません」
「そこは私にではなく、まず息子であるラシェルに声をかけるべきではないですか?」
無駄に爽やかににっこりと笑顔を浮かべてアンドリューが告げると、侯爵はぎこちなくラシェルに視線を向け、ぎゅっと手を握りしめると小さく謝罪を口にした。
「……すまない」
「……いえ」
侯爵らしいと思う。それになぜか安心さえもした。
ここで言い訳をされても、過去に起きた事実は変わらないし、植え付けられたものの折り合いが変わるとも思わない。
かといって、今までの正反対の態度で寄り添おうとされても困っていただろう。放置していた当事者にそうされたところで、今更との気持ちも強くなりそうだ。
許すも許さないもない。義母たちさえいなくなるのであれば、今はそれ以上のことはもうどうでも良かった。
だけど、周囲のほうがそれでは気が済まないようだった。オズワルドが冷え冷えとした声で、侯爵に提案する。
「それだけですか? 事情がおありなのかも知れませんが、ラシェルの受けてきたものは決して侯爵様を許したとかではありませんから、そこのところをお間違いないようお願いいたします。適当に手を打っておこうなんて生ぬるいことは言わないですよね?」
「わかっている」
侯爵はゆっくりと頷いた。
家の身分はオズワルドのほうが上とはいえ、十代の若造に言われるのは気分が良くないだろうが、侯爵は特に気分を害した様子はない。
「それは良かった。体力があり余っているようですので、彼女たちは鉱山で仕事をしてはどうかと思います。いくつか理想的な場所がありますのでどうでしょう?」
「修道院ではなく鉱山か」
「はい。そこでどのように扱われるかは知りませんが、あのような者でも役に立てる仕事はあると思いますよ。ラシェルへの贖罪の気持ちがおありなら、なるべくここから遠くの場所で、二度と地上に顔を出さないようにしていただきたい。後ほど、候補資料は送らせていただきます」
だから、地上って。
鉱山には犯罪者がよく労働力として送られる。もとは貴族の令嬢である義母と義姉がそこでの労働に耐えられるとは思えないが、修道院に行っても謙虚とは無縁な義母たちは迷惑をかけるだけのような気がする。
実質的な労働力と言うよりは、男たちの相手をする可能性も含めての提案なのだろう。どちらにしろ、そこに待っているのは地獄である。
犯罪者たちと一緒にとまでにはならないだろうが、それを侯爵が決断し、義母の実家も良しとしたのなら、実行されてしまうのだろう。
ラシェルはこれでも跡継ぎである。そして王太子殿下の側近。このような形でばれ、家門存続を脅かしていたという点においては、判断次第ではあり得なくもない。
罰が重すぎるのではとは思うが、年数だとか実際の待遇だとか細かなところは父たちが決めることだ。薄情でもなんでも、ラシェルは口を挟まなかった。
義母たちがいなくなってアンドリューのもとに戻ったレイジェスとロイジェスは、むっと仁王立ちして侯爵を威嚇している。
生真面目なレイジェスは、黙っていられないとばかりに口を開いた。
「明らかな元凶はあの人たちでしょうが、侯爵様のそもそもの管理がなっておらずラシェルを追い詰めた。そこの落とし前はどうつけられるので?」
「そうですね。普通ならあり得ないと思います」
「唯一の息子とおっしゃっていたのに、これではあまりにもひどい」
オズワルドとアンドリューも追い打ちをかける。
彼らが自分の代わりにそれぞれ怒っていることが節々に感じ取れ、ずっと重たかったものがすこんと払われていく。
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