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好きだ *sideラシェル①
しおりを挟むルーシーと王都の街で出会い、次の日の休みもひとり部屋で沈み込む。
誰にも会わず、ずっと籠もりっきり。
あいにく、外は雨で室内の明かりをつけないと暗く、ひとり取り残されたような、急かされるような気持ちになって胸の辺りを服の上からラシェルは掴んだ。
ずっと、ラシェルの頭の中はルーシーのことばかり。
皮肉にも特定の女性のことでこんなに思考が埋め尽くされるのは、義母たち以来のことで戸惑いのほうが大きかった。
義母たちとはまったく違うものということだけは、さすがにラシェルもわかっている。
ルーシーのことを考えると胸が苦しくなるのに、彼女の姿を思い浮かべるだけでふわっと浮くような幸せな気持ちになり、その後にすぐぎゅっと締め付けられるといった浮き沈みが激しい。
「もしかして、これが好き、とか?」
憎らしくもあるけれど、胸に芽生える感情はそれだけではない。
以前、ルーシーの腕を強く掴んでしまった手を見つめる。
あの感触は、今でも苦い気持ちとともに思い出せる。
そこからルーシーのこげ茶色の瞳だとか、頬に散るそばかすだとか、小さな口からはっきりと告げられる声だとか、ひとつ思い出すとルーシーを形成するあれこれに思考が飛んでいく。
ラシェルは意味もなく手を開いたり閉じたりして、目をつぶった。
わからない。
自分がどうしていけばいいのか、これが好きからくる感情だとして、自分に何ができるのか。
そして、やはり好きとは何か。
その感情自体を覚えるなんて自分でも疑心暗鬼である。図星を指されたことが衝撃的だったから気になるだけなのかもしれないと、一向に自分の気持ちのことなのに掴めない。
答えを知るには、やはりルーシーと接触を図るしかない。
そう自分に言い聞かせて接触を今まで以上に試みるが、何度誘っても軽くいなされて、むしろ仕方がないなと温かな眼差しまで向けられる始末。
嫌われるよりマシだが、ラシェルが女子に捕まってもルーシーはまったく気にもしていないようで、そのことを突きつけられるたびにへこみずぅーんと気分が重くなっていく。
自分はこんなにルーシーのことばかり考えてしまうというのに、ルーシーの態度は正反対のいつも通りで胸が苦しかった。
いっそ憎らしいと思うほどに、ラシェルだけが一方的に感情を乱されている。
ルーシーの一挙手一投足が気になって仕方がなく、あの日の男とはどういう関係なのか問いただしたくて仕方がない。
これが好きから来る感情だとしたら、相手はどうなのだろうと当然考えることになり、現在の状況にまた落ち込む。
今のラシェルには、ルーシーにとって何かプラスになるものなんて何も持っていない。
「はぁー。まじかっ。最初から望みなんてないし」
ラシェルは、右目を隠しても自然なように伸ばした青髪をくしゃりとかき上げた。
もう、ルーシーは誰かのものなのか。
問い詰める資格なんてないのに、汚れた自分なんかがルーシーに触れないほうがいいと思うのに、どうしてもルーシーの異性関係が気になって仕方がない。
もやもやする答えが知りたいとか、好きかどうかはまだわからないと考えながら、結局自分はルーシーに関わりたくて、よく見られたいだけなのだと思い知らされた。
ルーシーからすれば、女嫌いの遊び人。意味のわからない変な男であり、嫌悪はされてはいないが、そんなクズどうでもいいと眼中外。
信用なんてまったくもってなく、あの日ルーシーと話してからは女子たちと距離を置いているけれど、それさえもルーシーにとってはどうでもよく、現状を伝えたところで信用される要素を自分は持ち合わせていない。
自分の立ち位置や関係性を冷静に分析すればするほど、ラシェルは落ち込んだ。
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