巻き込まれモブは静かに学園を卒業したい【後日談追加】

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
57 / 63

アリスの断罪 *sideラシェル②

 
 次の日、ラシェルはアリスのもとに訪れた。

「何よ。役立たずな男爵ね。こういうときに守るのが親の役目ではないの?」

 学園長からは退学処分であると伝えられ、アリスは泣いて愁傷に落ち込んだ様子であったと聞いていた。だが、大方そうだろうなとは思っていたが、やはりパフォーマンスであったらしい。
 暴れたであろう形跡が至る所に見られ、通信魔道具での外部との連絡に失敗し憤っているようだ。

 男爵は養女のアリスに構っていられるような状態ではないので、連絡など今後も取ることはできないだろうが、ラシェルは親切に伝えるつもりはない。
 後ろ盾を失ったことも知らず、しばらくやきもきすればいいのだ。

 情報がないということ、自分に何が起こっているのかわからないという怖さを少しでも感じればいいと思う。
 ルーシーはこんなことは望んでいないかも知れないが、アリスに苦しめられた時間の分、アリスも悩み苦しんだらいいと思う気持ちが止まらない。
 こんな自分勝手な人物にルーシーが突き落とされ、少しでも助けに入るのが遅れていたらと思うと、昨日の今日で怒りが簡単に消えるわけもなかった。

 感情的になりすぎてはいけないと、一度大きく息を吐き出し気持ちを落ちつかせ、ラシェルは改めて扉をコンコンとノックし合図を送る。
 扉を開けても気づかないほど怒り狂っているようで、自分たちに見せる姿との違いは笑えるほど落差がある。

「失礼するよ」
「ラシェル様、助けに来てくださったのですね! やっぱり私にはラシェル様だけです」

 きぃーっと髪をかきむしり怒っていたのに、ラシェルに気づくと慌てて整えてうるっとピンクの双眸に涙を浮かべる。
 ずいぶん、変わり身が早いことだ。

 立ち上がりこちらに寄ってこようとするので、手をかざして静止させる。
 俺だけとか、本当に勘弁してほしい。アンドリューやオズワルドたちは必要以上にアリスと関わりたくないだけであり、ラシェルもルーシーのことがなければそうしていた。

「……どうしているのかと思っていたけど、元気そうだね」
「いえ、これは、ちょっと混乱していて」

 荒れた部屋に視線を向けると、アリスは照れながら頬をかく。それから上目遣いでラシェルを見て、恥ずかしいですとぷっと唇を尖らせた。
 眉間が寄っていくのがわかりぐりぐりと解しながら、ラシェルはじっとアリスを見つめた。

 あざとさにさらに気持ちが冷えていく。
 アリスはどこまでいってもアリスだ。怒っても仕方がないとわかっているが、言わずにはいられない。

「アリスは自分が何をしたかわかっているの?」
「えっ? ちょっと怖いですよ。昨日のことまだ怒ってるんですか?」

 ぱちぱちと目を瞬かせ、本気でそう思っているだろうその言葉に、ラシェルは一瞬言葉を失った。

「…………怒るとかそういう次元ではないと思うけど」
「ええー。それについては学園長や殿下にも謝罪しましたし、説明しましたよ。なのに、なんで退学にならないといけないんですか? あれはたまたま手が当たっただけなんですぅ。それに怪我したわけではないからいいじゃないですか?」

 あり得ない言葉の数々。
 あまりの言い分に怒っても仕方がないと何度もそう言い聞かせ、ラシェルはぐっと手を握りしめた。

 光魔法保持者という名目で学園に入学し、魅了魔法の件や男爵のこともあり観察対象者として学園いることがある意味許されていただけ。
 こんな女にルーシーがずっと意思を無視して虐げられてきたと思うと、ラシェルが怒りで目の前が真っ赤になる。
 表情筋がまったく仕事せず、怒りを通り越して自分でも驚くような冷えきった声が出た。

感想 44

あなたにおすすめの小説

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。

ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・ 強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。