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1-something quite unexpected-
15高塚くんとの距離②
しおりを挟むお金が発生するイメージモデルや芸能人ではないのだから、何をしようが放っておいてくれというのが高塚くんの本音だろうとは思うし、勝手に盛り上がって害ある行動されるなら黙ってないよってとこだろうか。
実際、こういう状態を高塚くんが望んだわけではないだろうし、今回は話を聞いていて他人事とはいかないのが頭の痛いところだったりする。
とにかく大半がそんな感じで、どういう感情を抱えているかは別にして、私よりも周囲の方が高塚くんがこのクラスに来ることに慣れてしまっているのが現状だ。
遠くから睨んだりちくりと口撃してくる女子も、それも嫉妬と羨望なのだろうと思うと多少は仕方がないというか。
それくらい、高塚くんに構われている自覚は莉乃にだってある。──……たとえ、期間限定なのだとしても。
何度も考えることだけど、莉乃自身もなんで自分なのかと本気で疑問に思っているから、睨まれるくらいならもう仕方がないというか。そう思わないと、やっていられない。
自分の顔はそんなに悪くはない方だとは思っているけど、悪くないだけで、もっと自分よりも美人だったり可愛い子はたくさんいる。
だから、どうして高塚くんが一緒にいたいって常に言ってくるのか、その言葉を実行して誘いにくるのか、莉乃自身もわかっていない。
周囲にどうしてって思われていたところで、訊ねられたところで、莉乃は答えを持っていない。
だって、高塚くんはなにも言わない。
探したよって言われて、強引に話を進められて二人っきりになって、連絡先聞かれて、聞かれたことに答えて。学校ある日は毎日一緒に帰って。
朝のおはようのメールからおやすみのメールまで、マメに連絡してくる高塚くん。
莉乃は気付いたら返したり返さなかったり。おやすみのメールとおはようのメールを見るタイミングが一緒だったり、他もそう。
気付いて余裕ある時に返す。もともと、通知を気にする方ではなかったけれど、高塚くんを意識しすぎてはダメだと思うと少し前より放置気味になっている自覚はある。
それに対して何も言われないから、結局何を思って高塚くんが連絡してくるのかわからない。
だから、莉乃も余計に気にしないでいようって心がけるようになった。
心がける、つまり気にしてしまうほど、高塚くんの存在は莉乃にとっても日に日に大きくなってきていた。
高塚くんのことは嫌いではない。むしろ、一緒にいて楽しい。でも、相手の行動の思惟まではわからない。縛り付けることもできないし、反対に相手も莉乃をそうすることはできないはずだ。
だから、莉乃からは深く追求することはしていない。これが高塚くんの望む形なのなら、何も言われない限りこのままでいいかって。
期間限定なのなら、なおさらその時まで深入りせず適度に仲良く楽しく過ごせばいいや、って思う。
注目されるのは嫌だけれど、仲良くしたいって言われたことは単純に喜ばしい。それを行動に示してくれていることは、やっぱり嬉しいって感じてしまう。
さりげない気遣いだとか、強引なところも含めて退屈しない運びがうまいので誘われると断りたくないって思ってしまう。
それに────。
「りの」
ぼんやりとそんなことを考えて黙っていると、高塚くんが苛立ったように声を上げた。ぴくりとノートを持っていた手が反応する。
トーンがひとつ低くなるだけで、ピシッと背筋が伸びる感じ。実際、姿勢がピンと伸びる。
すごいよね。声ひとつで。
周囲もざわざわしていたのが、シーンと静かになった。そんなことなど気にしない高塚くんの声がよく通る。
「りーの。都築莉乃さん。一緒に帰ろうっていってるんだけど」
「あっ、はい」
「また、その返事。そろそろ慣れて」
「…………」
なにに?
高塚くん自体に?
この構ってくる環境に?
恋人でもないのにどう慣れろというのか。同性なら意味なんて考えないのに、それが異性になると余計なことを考えてしまう。
これが普通なのかとか。普通ってなんだとか。
男女ごちゃまぜで数人で行動するならまだしも、二人っきりってやっぱり意識してしまうのは私だけだろうか。
平然と注目される中行動できる高塚くんを見ていると、きっとそうなのだろうと確信する。
やっぱり、経験値の違いってやつかな。
まったく周囲を気にせず行動をする高塚くんにはきっとわからない悩みだと思う。
「りの」
「うん。ごめん」
余計なことを考えていたせいで、待たせてしまった。何回も声をかけさせてしまって悪かったなと慌てて謝ると、きゅっと高塚くんの眉根が寄る。
「そうじゃない」
「??」
「…………まあ、いい。行こう」
「……うん」
ちょっと機嫌が悪くなった。声が平坦になったり、表情が作り物めいた完璧なものになると高塚くんはちょっと怖い。
直接怒られるとかはないけれど、自分がきっかけでそうなるとドキドキと心臓に悪いし、できることなら機嫌のいい人と一緒にいたいと思うわけで、莉乃は慌てて席を立った。
これ以上、ここにいても目立つだけで何もよいことはない。
美咲が同情めいた眼差しで手を振ってるのに返して、莉乃は小さく息をつくと高塚くんのところへ向かった。
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