高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
32 / 81
1-something quite unexpected-

32高塚くんと気まずい①

しおりを挟む
 
「またねー」
「りぃちゃん、今度は二人でデートしような」
「未成年をたぶらかすな」
「相変わらずシスコンだな」
「この程度をシスコンと呼ぶなら、ほとんどのやつがシスコンになるな。これは兄としての思慮と友人が犯罪者にならないようにの配慮だ」
「言葉にするとなんかひどいな」

 兄の紘乃と拓真くんがいつもの掛け合いを始めた。

 土曜の夜は拓真くんが泊まることになったので、結局、日曜は両親二人だけで出かけていった。
 久しぶりに家族で叔母のところに顔を出しその帰りに必要なものを買いにでも行くかーくらいだったので、あっさりと予定変更が決まった。
 余談だが、お父さんと久しぶりのデートになるわね、と嬉しそうに着る服を決めていた母は可愛らしかった。我が家は両親の仲が良くてなによりだ。

 莉乃は辞退を申し出たが、せっかくだからと拓真くんが車であっちこっち兄とともに連れて行ってくれた。
 飛び級して一足先に働いていて余裕があるのと、もともとそこそこのお家柄だとかで全部の会計が拓真くん持ち。兄よ、友人に集らないでほしい。兄が全く遠慮しないから、妹の遠慮が通らなかった。

 自分の興味なきことはとことん動かない兄の基準は難しい。お兄ちゃんではなく名前を呼ぶように幼稚園のころに言われ、理由を聞くと名があるのに呼ばない方がおかしいと真面目な顔で言われた。あと兄妹で同じ響きが入っているのを確認できて嬉しいだとか。
 感性も独特でそんな兄に付き合える拓真くんは貴重な友人なので、我が家としては大歓迎するのは当たり前のことだ。

 慣れ親しんだやり取りを終えた兄とともに拓真くんを見送り、リビングでシンクに手をついてお茶を飲みだした兄に声をかける。

「部屋に戻るね」
「ああ。拓真とデートは許さないぞ」
「いやいや。ないでしょう」
「優良物件ではあるけどな」
「どっちよ」

 真顔で告げる兄は、本気か冗談かわからない。
 とにかく、兄は兄なりに拓真くんを友人として認めているということはわかったので、まだ言うかと嘆息すると適当に切り上げて莉乃は自室に向かった。

 休日の終わりが近づき、程よい倦怠感がまとわりつく。
 わずかに日が沈み始め、電気をつけるほどでもないけど少し暗くなりだした部屋の扉を閉めると、はぁーっと息が漏れた。

「楽しかったけど、ちょっと疲れたなぁ」

 一人になると思わず声に出た。

 この二日間、いつもより外に出ていたからか、よく遊びました花マルと締めくくれるような休日だった。
 友人と遊ぶのも、兄とそして憧れのお兄さんと出歩くのもどちらも楽しくて、莉乃の心は満たされ潤ったけれども、どこかずっと後ろ髪を引かれている気分は付きまとっていた。

 避けていたがどうしても気になって、莉乃は机の上に視線をやると同時に、はぁっと大きく息を吐き出した。
 しばらくぼんやりと立っていたが、このままではいけないと首を振る。

「よしっ」

 誰に言い聞かせるでもなく声を張り上げると、大きな動作で机の上に画面を下にして置いたままにしてあったスマホを手に取る。
 そのまま横にあるベッドにボスッと腰掛け、しばらく暗い画面のスマホを眺めていたが、はぁぁ~と内なるものを吐き出しながらそのままごろりと身体を後ろに倒した。

 柔らかすぎず固すぎずちょうどいい塩梅のベッドに身をまかせる。──ああー、やっぱりベッド最高!! ごろごろするの最高っ!!
 しばらくアホみたいに身体を左右に動かしていたが、我に返ってぴたっと停止した。

「ううぅぅぅ~」

 わかってる。わかってる。ちょっと現実逃避したくなっただけ。
 
 ゆっくりと目を閉じると、土曜日に見た高塚くんの私服姿が浮かぶ。
 同級生とは思えないほど大人っぽくて、普段の優しい雰囲気とは違った危険な色気を放ち、周囲を惹きつけるような男臭さ。

 あれは反則だと思う。
 学校でのギャップもさることながら、誰が見てもいい男なのはわかり、十代の青年ではなく女性の扱いにも慣れ余裕がある大人の男性に見えた。
 そんな彼の姿は立っているだけで雰囲気が他とは違い、世間慣れしたものが見て取れた。

 やんちゃそうな人たちとの付き合いもあるようで、それらはドン引くよりもさらに高塚くんの魅力を増大させていた。
 もともと、清廉潔白という雰囲気ではなかったから、そういう人たちと対等に付き合える強さというのが魅力的に映るのかもしれない。

 当初の美咲の情報は事実に基づいているのだろう。その中に偽りや誇張が入っていても、あの姿の高塚くんにはそう納得させられるものがあった。
 高校生の女子なんて高塚くんからしたら子どもなんだろうなと、改めて実感するものだった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

喚ばれてないのに異世界召喚されました~不器用な魔王と身代わり少女~

浅海 景
恋愛
一冊の本をきっかけに異世界へと転移してしまった佑那。本来召喚されて現れるはずの救世主だが、誰からも喚ばれていない佑那は賓客として王宮に留まることになった。異世界に慣れてきたある日、魔王が現れ佑那は攫われてしまう。王女の代わりに攫われたと思い込んだ佑那は恩を返すため、身代わりとして振舞おうとする。不器用な魔王と臆病な少女がすれ違いながらも心を通わせていく物語。

十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。 そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。 記憶を抱えたまま、幼い頃に――。 どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、 結末は変わらない。 何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。 それでも私は今日も微笑む。 過去を知るのは、私だけ。 もう一度、大切な人たちと過ごすために。 もう一度、恋をするために。 「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」 十一度目の人生。 これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。

元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が私への初恋を拗らせていた〜

岡崎マサムネ
恋愛
アイシャがかつて赤の大魔導師と呼ばれていた前世を思い出したのは、結婚式の当日だった。 まだ6歳ながら、神託に従い結婚することになったアイシャ。その結婚相手は、当代の大魔導師でありながら禁術に手を出して謹慎中の男、ノア。 彼は前世のアイシャの教え子でもあったのだが、どうやら初恋を拗らせまくって禁忌の蘇生術にまで手を出したようで…? え? 生き返らせようとしたのは前世の私? これは前世がバレたら、マズいことになるのでは……? 元教え子を更生させようと奮闘するちょっぴりズレた少女アイシャと、初恋相手をもはや神格化し始めた執着男ノアとの、歳の差あり、ほのぼのありのファンタジーラブコメ! ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
面食いで愛人のいる侯爵に伯爵令嬢であり女流作家のアンリが身を守るため変装して嫁いだが、その後、王弟殿下と知り合って・・

処理中です...