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婚約と俺様王子
次の段階①
しおりを挟むそれまで淫らに動いていた手が止まり、アンドリューはそっと私を包み込むように抱きしめてきた。
「ああ、ティア。そんな風に考えてたんだ」
「………」
「ティア。こっち向いてごらん」
拗ねた気持ちで黙っていると、顔を寄せてきたアンドリューがなだめるように顔中にキスの雨を降らせてくる。
優しく触れるだけのキスを丁寧に隙間なくされるものだから、思わずふっと笑うと、ようやくアンドリューはキスの嵐をやめ顔を上げた。
「できることなら今すぐティアを俺のものにしたいと思ってる」
「なら」
眉尻を下げくしゃりと崩れた笑顔のあと、真面目な顔で見下ろしてくるアンドリューに視線が吸い寄せられる。
とく、とく、と新たな鼓動は、期待なのか、不安なのか。
好きだからこそ、アンドリューの一挙手一投足に私は反応してしまう。
「ティアが好きだ。できることなら余すことなく俺のものって、手っ取り早く奪ってしまいたい。どろどろの甘々にして俺だけって喘がせてぷち犯してしまいたい」
「……」
……最後、恐ろしい言葉が聞こえた。うん。気のせいだ。気のせいにしておきたい。
思わずひるんで視線を彷徨わせると、続く真剣な声音にまたアンドリューへと視線が、思考のすべてが向かう。
「でも、できない。ティアを完全に守れる体制を敷けていない。そんな中途半端なままでティアを奪えないしもらえない」
「私がいいって言っても」
「ふっ。ティア、ああ~、くそかわいいな。煽るなよ」
「…………っ」
低く呻くような声にぴくっと反応すると、ふぅっとアンドリューは深呼吸をし軽く首を振った。
「だが、ダメだ。一度、ティアの味を覚えると我慢が効かなくなりそうだしな。ティアの体力も心配だし、我慢しすぎたあとのそれはしばらくはまともに動けないかもしれない」
「そんなに!?」
「ああ。それだけティアが欲しいと思っている。だからこそ、今ある障害を完全に排除してからでないと心配で仕方がない。俺は俺の大事なものを傷つけられるのは許せない。しかも、それが俺が要因だというのなら尚更な。だから、これは俺の我儘だが確実にティアが安心できる環境になってから、ティアが欲しい。そのためにもう少しだけ時間がほしい。待ってくれるか?」
困ったように眉尻を下げながらも意思の強い瞳で告げられる。
ちょいちょい怖い言葉が入っているが、すべては自分のためだと言われれば、素直に頷くしかない。
「……はい」
「だからと言って、何もしないでいられるほど聖人君子ではないし、俺はティアともっと触れ合いたいし、俺だけが知れるティアを見たい」
「…………」
流れ的に素直に頷きたいけど、俺だけが知れるという言葉に声が喉に引っかかった。
想われている、大切にされていると伝わってくるのに、それを諸手を上げて喜べないのはどうしてなのか。
「ティア。ティアから欲しいと言われて舞い上がっている俺をもっと喜ばせてくれ。うん、と言って」
軽く思考を振り払うようにゆっくりと瞬きをすると、私は改めてアンドリューを見つめた。
大好きな色の瞳が、愛おしげに自分を見ている。
こんなにも大事に思われて求められて、もっともっと王子のことが知りたいし、守られるだけでなく支えていけるようになりたい。
真摯な気持ちで私はこくりと頷いた。
「わたしも、……たくさんアンディのことが知りたいです」
「ああ。くそっ。かわいいな。限界だ。今日は次の段階にいこうか? ティアが俺も気持ち良くなってほしいっていってくれたし、いい?」
さすがに自分から求めるようなことを言っておいて、ここで断ることなんてできない。
アンドリューの本音も聞けたし、相変わらず不安は付きまとうが任せてみようと小さく頷いた。
「……はい」
「ありがとう。ティア、好きだよ」
恥ずかしすぎて小さな小さな返答になってしまったが、しっかり聞き取ったアンドリューはとても幸せそうに笑った。
求められていることはエロいことなのに、あまりにも無邪気に嬉しそうにされると、気持ちが今まで以上にほわほわとする。
嬉しくて、アンドリューのすることになんでも応えたい。そう思って、自らの意思を示すようにアンドリューの唇に自分から重ねる。
まったくスマートにいかずに、むちゅっと柔らかな感触が重なり合っただけのそれだが、自分から行動できたことがちょっぴり誇らしい。
ほくほくと満足げに笑い、アンドリューもきっと微笑んでくれているだろうと思って視線を合わせぴたりと止まる。
欲望がはっきりと見えるギラついた眼差しに、私はすぐさま後悔することになった。
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