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課題とお野菜ズ
噂③
しおりを挟む「フロンティア」
「元気出してくださいね」
「いろいろタイミングが悪く重なっているだけですから」
「そうですわ」
ちょっと落ち込んだ声を出しただけで友人たちが一斉に励ましてくれるので、ふふっと笑いが漏れる。
私は気を取り直し、話を続けた。
「ありがとう。ちょっとだけ滅入ってはいるけどそんなに落ち込んではいないから。それにみんなは態度が変わらないもの。それだけでも心強いし」
「でも、フロンティアがこれ以上疲れる前になんとかしないとね。伯爵領に戻って元気になるなら帰るのは有効だと思うけれど、ローレルの意見には賛成だわ」
「帰らないほうがいいってこと?」
「そう。この状況でよほどの用事がないのに領に帰省するのはやめたほうがいいわ。反論する者がいないと噂も悪化するだろうし、あれこれいう人が過激になる可能性が高いわ。それに試験も近いしね」
けっちょんけっちょんにしてやりたい気持ちもわかるけど、と最後に付け加えた。
くすりと笑っているが目が本気だ。さっきは嗜める側に回っていたが、ミシェルも腹に据えかねているのだろう。
「ふふっ。ミシェルも穏やかではないわね。まあ、試験がなかったら今すぐ飛んでいきたいのだけど、さすがにそこはおろそかにできないってわかってるわ。ああー、隊長やシュクリュに会えるとうまくいく気がするんだけどなぁ」
「そこは殿下じゃないの? それに噂のこともあるし」
「うっ。だって、忙しい方だからお手を煩わせることを思うとちょっと。……それに癒やしとはまた違うというか」
アンドリューとともに過ごす時間も私の生活の一部として馴染んできたけれど、癒されるというよりはお野菜たちと何しようかなと楽しむときのわくわくとは違った高揚を感じる。
会いたいけれど、会えたら嬉しいけれどのほほーんとするというのとは程遠い相手だ。
「高貴な方に人伝の噂話に事実なんですかって確認しにくいし」
そもそも現在会えていないし、久しぶりの連絡にそれをこちらからぶっこむ勇気はない。
王太子であるアンドリューが抱えていることと、自分が抱えていることの重みは違うし、忙しくてきっと疲れている相手に煩わせことはしたくない。自分が負担になりたくない。
ううん。負担だと思われるのが少し怖い。
だから、自分である程度のことは蹴りをつけたいという気持ちが強かった。
アンドリューへの確認は様子次第で、最終的にどうしようもなくなったら直接聞けばいいくらいに思っている。
「確かにそうよね。言っているのはほぼ南部の貴族だし、もともとやっかみがあってのことだから鵜呑みにするのもどうかと思う。それにしても、フロンティアもよく耐えてると思うわ」
「我ながらそう思うわ。でも、言い返しても拗れるだけだし、姉さまもそういったことはさらりと流して、ここぞのときにぺちっと返すほうが効果的よって言ってたから」
もともと姉にスルー機能はついていたと思うが、ぺちっと返す部分に義兄の影響を強く感じた。
いずれにしても、絶対的な味方が背後に控えているので気持ちは折れることはない。気分により落ち込むこともあるが、それらも癒やしがあったらなんとかなる気がしている。
「そう。フロンティアのお姉さまもオズワルド様もおられるから、フロンティアはきっと大丈夫ね」
「ええ。とっても頼もしい姉夫婦ですから。今はただ、お野菜たちに癒されたいって気持ちが抑えきれないってだけで」
「まあ、でしたらこれをお貸しいたしますわ」
そう言ってローレルから出されたのは、ミニチュアフィギアのお野菜たち。
王都に動くお野菜ズがいることはまだ公にしていないので、お野菜たちと嘆く私になんとか励まそうとしてくれているようだ。
「私も持ってますわ」
「私も」
「あっ、それとっても可愛い」
ローレルが出したのを皮切りに、周囲の友人たちも声を上げ盛り上がる。
どこに潜めていたのかどうぞとばかりに次々と差し出され、目の前にはたくさんのミニチュアのお野菜たちの姿が並んだ。
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