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課題とお野菜ズ
隊長~
しおりを挟むキャーッと悲鳴が聞こえたが、逃げるなと腰に回っていた手にぎゅっと力が込められる。
「殿下」
「ティア。返事は?」
「何のでしょうか?」
「二人きりで話すこと」
「わかりました」
吐息がかかるほどの近さで、ん? と問い詰められ、私は頬をますます朱に染めこくこくと頷いた。
見た目以上にがっしりしたアンドリューの腕の感触だとか、自分に向けられる変わらない双眸だとか。
それに安心するのに、いざ目の前にするとどういう態度をとっていいのか困ってしまう。
いつもと比べるとそこまで過多なスキンシップではないはずなのに、すっごい恥ずかしいのはなぜだろうか。
久しぶりすぎて、アンドリューの温もりや匂いに落ちつかない。
このまま包まれていたいと思うと同時に、逃げ出したい衝動が溢れてくる。
今は逃げたい衝動のほうが勝っていた。ひとまず、落ちつく時間が欲しい。
────誰か助けて~!
二人きりではないので余計に王子の手を無下に振り払えないし、絶対放してほしいわけでもないというなんとも乙女脳的なぽわんな思考もあって、第三者に仲介を求めたい。
視線を彷徨わせていると、ぴたりと隊長と視線が合う。目がないのにがっちり合ったのがわかる。
「隊長~」
甘えた声が出る。隊長、隊長、と心の中で連呼する。
そうだ! そもそもなぜアンドリューと隊長が?
その理由はすっごく知りたい。知る必要がある。
だって、伯爵領にいるはずの隊長がここにいるんだよ?
アンドリューにも会いたかったけれど、同じく伯爵領に帰りたいくらい隊長にだって会いたかったのだ。その隊長が、王都にいるはずのない隊長が、ここにいる!
さすがにシュクリュはいないようだけど、隊長が王都にいることなど想像したこともなかったので嘘みたいで信じられない。
「隊長もどうしてここに?」
というか、伯爵領から離れて大丈夫なのだろうか。
王子もいるからか、なんとなく隊長がここにいることを受け入れていたが、考え出すと心配で私はまじまじと隊長を見た。
えっへんとばかりに、腰辺りに両手を添える隊長。
白のボディも葉もツヤツヤしているから問題なさそうではあるが、アンドリューみたいに魔力の流れが見えるわけではないからよくわからない。
近くで確認したい。
そして癒されたいとうずうずとしながら王子に視線を向けると、はぁっと小さく息をつきアンドリューは私を掴んでいた手の力を緩めそっと離れた。
アンドリューが手を伸ばせばすぐに捕まえられる位置ではあるのだが、拘束がなくなったということは声に出さない私の願いを聞き取ってくれたということだろう。
こういうところも、いいなぁと思う。
私がしたいことを把握して、俺様であるのに大事なときには譲ってくれる人。
王子の立場なら自分を優先させることなんて容易く簡単に命令できるのに、私の気持ちを慮ってくれている。
ちょっとしたことだけどアンドリューの立場や性格から、それがどれだけすごいことか。
それが嬉しくてにっこり笑うとアンドリューの手がぴくりと動いたが、そのまま顔に手をやりまた息を吐き出すと、今度はいいから行けとばかりに手を振られた。
お許しが出たので、私は満面の笑みを浮かべて両手を広げた。
「隊長~!!」
隊長がとことこと足元まで歩いてきて、両手を上げる。
そして、ぴょん、ぴょんと相変わらず縦飛びが不得意な隊長は小さく飛んでいるが、隊長の精一杯のアピールについニンマリしてしまう。
これは抱っこの要求だ。
ああ~、めっちゃかわいい。
離れたところでローレルが、「くはっ、癒やし。可愛すぎますっ!」と吐血でもしたのかというほど興奮し、ほかの友人たちがワイワイはしゃいでいる声が聞こえる。
わかるよ。わかる。この隊長の可愛さはくぅぅっと唸りたくなるレベルだ。
癒やし~。救い~。隊長ラブです!!
お野菜たちの中でも隊長は特別だ。衝撃的な出会いから苦楽をともにし、今では頼もしい相棒でもある。
私は屈んで隊長を抱き上げた。
「隊長、会いたかったわ」
すると、俺もとばかりにぽんぽんと肩を叩かれる。
お疲れ様と言われているかのように、ずっとぽんぽんと叩かれ、よくわからないけれどじんわり涙が出そうになった。
頑張ると決めたし吹っ切れたばかりだったけれど、何から頑張ればいいかわからなくて、不甲斐なくて、ずっと窮屈な感じでしんどかった。
課題の植木鉢の紛失も昨日起こったばかりで、そっちは見通しがついていなくて、そんなときにアンドリューと隊長が現れて、なんだか頑張らなければときゅっと硬く結んでいた心の鎧が緩んでいった。
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