【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

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お仕置き③

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 だってアンドリューだよ?
 話を聞いていたら連絡しようと思えばできたのに、もしかしなくても連絡が二回だけだったのはわざと? 私から連絡が来るか来ないか試されていた?

 気づいた事実に口をぽかんと開けると、にっと笑みを浮かべた美貌が近づいてきてぱくりと唇を食べられた。
 キスされるとは思わないタイミングで、抵抗する間もなくぬるりと入ってきた舌にぐるりと絡め取られる。

「んぅ」
「……はっ、ティア。気づいたようだな」

 やっぱりそうなんだ?

「多少なりとは寂しいと思ってくれていたようだが、連絡手段があったのに利用しない。聞けば解決するような事案があったのに頼ろうとしない。それって恋人としてどうなのかな?」
「それもさっきも言いましたが、アンディは忙しいですから煩わせることはしたくなくって」
「恋人からの連絡を煩わしいなんて思わないよ。普段からティアはあまり主張しないから、むしろ困らせてほしいくらいだがな」

 心配くらい堂々とさせてくれ、と口づけられる。

「……その、どういったタイミングだとか、話の切り出しかただとかもよくわからなくて」

 あやすようにキスを繰り返され、きゅっと手を掴まれる。ちゅぱっとわざとらしく唇から離したアンドリューが、今度は掴んでいた手を口元まで持っていき指を食む。
 ぬるりとした感触、じっと私を見ながら指を一本一本舐めていくアンドリューの姿に、私はひくんと鼻を鳴らした。

「結局一か月も会えなかったのだから、寂しい夜くらい何も気にせず連絡してくれたらいい。本当に忙しかったら取れないが、必ず折り返す」

 わかった? と中指を赤い舌を這わしながら問いかけてくる。
 ちろちろと見える舌がエロくて、話の内容も普通の恋人ならわかるけれどやっぱり相手は王族だと思うと気軽に頷ける内容ではないなとためらっていると、ちゅぽっと指をくわえられた。
 そして、かじかじと爪に歯を当てられる。

「ティア?」
「ですが……」

 口の中に指を含みながら話され遊ぶように舌を這わされ、はたから見れば偉そうに王子に指を差し出して食べさせているみたいで倒錯的な視覚にじわりと涙の膜が張る。

 話し合いが大事だとは思ったし、今回のことで反省すべきことは多々あるが、やはり王子の邪魔をしてまでとは思えない。
 頷いてしまえば早いことだけど嘘はすぐに見抜かれるだろうし、頷けば王子のことだから実行しなければさらにひどい目に遭いそうだ。

 まだ心情的についていけなくて頷いてしまえず唇を噛むと、悪い口だとばかりにぺろりと舐められる。
 今日のアンドリューはどうもいつにも増して舐めたり噛んだりだとか行動が獣っぽくて、甘いのにまっすぐに見据える眼差しだとかにも獰猛さも見せられて心臓に悪い。

「今回のように物理的に会えないのなら、会いたいと思ってくれているとわかるだけでこちらも仕事も捗る。連絡がないほうが気になって仕方がない。俺のためにも連絡して?」
「……頑張ります」

 言い方を変えられ、さすがにこれは頷かずにはいられない。アンドリューの気持ちを考える努力はしていきたい。

「うーん。やはりお仕置きだな。この先もこういったことがないわけではないからね」
「でも」

 やっぱり身分だとか背負っているものとか考えると、気軽になんて無理だ。
 今回のように一人で悩むくらいならアンドリューが言うように聞いてみようとは思うけれど、私の性格的に用事もないのに連絡するのとかはやっぱりできそうにない。

「でもじゃないよ。恋人なら時間の共有や意思疎通は大事だろう? どうもティアは俺のもので、俺はティアのものだという自覚が足りないな。だったらわからせるまでだ。心の準備もなく心臓が壊れそうなほど俺でいっぱいになってもらおうか」
「壊れるのはちょっと」
「心配するな。比喩としてだ。ただ、ティアが連絡していたらもう少し変わっていたことだからね」

 にっこりと笑った表情は、しっかりと己の行いを受け止めようねと言っていた。

「うっ。はい」

 学園で会ってから、ずっとうっすら滲む不機嫌の理由がわかっても今更だった。
 ここは頷く以外の選択肢はない。
 さすが腹黒王子様。公に仕事し大捕物をするために動きながらも、アンドリュー的に思うことがあって私的なことも状況を利用し私に仕掛けていたようだ。

 きっとこうなることを予想はしていてのお仕置きなのだろうと思うが、私も反省すべき点はあるので内容的には憎めない。
 それにあの時間があったからこそ、己の至らない点だとか、アンドリューへの思いだとかも改めて気づけたし……。って、まさかそこまで見越してとか?

「どうした?」

 じーっと見つめてみるが、にぃっこり笑顔と捕食者である熱視線は外されないまま。

「いえ。その、会えて嬉しいです。これは本当の気持ちですから」
「ああ」

 結局、お仕置きという甘い時間を受け入れるしかないのだと、私は緊張しながらもアンドリューに身体を預けた。


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