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ほこほこ日和
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しおりを挟む短い言葉だが凛とした声は、聞くだけで敬虔な気持ちにさせる。カワジはピンと背筋を伸ばしながらも、いつも通り声をかけた。
「出てこられたんですか? さっきは呼んでも出てきてくださらなかったのにぃ~」
ちょっと拗ねた気持ちでそう告げると、神様は肩のところから石燈籠の上に移動し仁王立ちする。本日の大きさは、カワジの人差し指くらい。
──めっちゃ、ちっちゃいぃぃぃ。かわいい~。
見た目はとっても可愛い。ついつい手を伸ばしたくなるが相手は神様。じっと我慢して見つめる。
キラキラ~、そよそよ~、淡い金の光をまとい、ぐいっと上がった眉は意志の強さを表している。姿を現したのは武甕槌命様。
「それはカワジとはかくれんぼしていたからな。だが、カワジの集中が時々途切れ、楽しそうだから我もかくれんぼをやめて混ざろうと思ってな」
「ええ~っ!! 見つけたかったのにぃ」
「残念だったな。時間切れで我の勝ちだ」
「時間制限なんて聞いてないですぅ。見つけたらご褒美をくださるって、白鹿さまに聞いたから絶対見つけようって思ってたのにぃ~」
ぷっくぅっと、途中で遊びを中断されてカワジは拗ねる。そりゃ、大和と一緒にいて楽しい気持ちになったが、実際ウキウキしていたが、神様とのかくれんぼも楽しんでいたのだ。
ご褒美は気になるが、実際神様と遊ぶことが楽しくて嬉しくて、そっちは二の次だ。
「そうだったな。なら、今日は我の負けでいい」
「ええ~っ!! それは嫌です。もう一回」
「なぜだ。ちゃんとご褒美はやるぞ」
「いいえ。ちゃんと自分で見つけてご褒美もらいたいです」
「なら、あとでもう一度しようか。それよりも、カワジと大和に縁ができたようだな」
「えっ? 武甕槌命様は大和のことを知っているの?」
「ああ。こちらも昔から縁があるからな。それよりも、大和が不思議がっているぞ。彼には我の姿は見えないから説明してやれ」
その言葉に、カワジは眉をひそめこちらを観察している大和を見上げた。カワジの声は聞こえているから、状況は理解しているようだが相手が見えないのでじっとこっちを見ている。
「あっ、そうか。えっと、大和。今、武甕槌命様が出ておいでになって、大和のことも知ってるって」
カワジがそう告げると、大和はうんと頷いて目を細めると、考え込みながら石燈籠の上に視線をやる。
「なんとなく、淡く光っているところにいるのかな。武甕槌命様なら、家と所縁があるので知られていてもおかしくはないのか……」
よくわからないがそういうものかとふむっと納得した大和は、見えないながらも神様がおられる方向に深々とお辞儀をした。
そして、カワジの方を向く。随分と優しい眼差しを向けられ、カワジはほわっと顔が赤くなった。
「俺はもう帰るな。かくれんぼの最中に悪かったな」
「……ううん。えっと、また会える?」
せっかく神様が楽しそうだと出てこられたのだが、話ができないのなら仕方がないのかと、カワジはおずおずと訊ねた。このままお別れはなんだか寂しい。
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